研究課題/領域番号 |
16K02095
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
辻本 法子 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (80633958)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 越境EC / インバウンド観光 / 中国人旅行者 / 観光土産 / リピート購買 / 消費者購買行動 / 知覚リスク |
研究実績の概要 |
観光土産の消費拡大のためには、観光土産として購買された商品のリピート購買の喚起が必要である。インバウンド観光における観光土産の消費を、帰国後のオンラインにおけるリピート購買に結びつけることができれば、地域の観光産業の販路のグローバル化が可能になる。 本研究は、中国人旅行者に焦点をあて、観光土産として購買された商品の越境EC(国境をまたいだオンライン上の商取引)によるリピート購買を調査し、観光土産の消費拡大のためのマーケティング・アプローチの方法を提案することを目的としている。本研究の学術的な意義は、(1)越境ECによる販路のグローバル化により観光産業の経済的安定が期待できること、(2)インバウンド観光に対応した観光土産の商品開発の知見が得られること、(3)売り手と買い手に加えて受け手に焦点をあてていることである。 平成29年度は、本研究の調査設計に必要な中国人旅行者の購買行動について、これまでの研究(JSPS科研費25501026)のデータをもとに分析をすすめ、以下の知見を得た。 (1)新規旅行者とリピーターの比較では、訪日頻度が高まるにつれ、観光土産に対するこだわりが強くなり、地域の特産品の認知や理解が高まり、売り手とのコミュニケーションで新たな情報を収集し、購買をおこなっている。(2)北海道と、その他の地域での購買者の比較では、最も気に入った商品カテゴリ、購買店舗に差異があること、北海道の観光土産は特産品であることが評価され、帰国後のリピート購買では旬の農産物への購買意向が強い。(3)観光土産のブランド認知の分析では、食品を購買した旅行者の3分の1が、購買商品のブランド認知(再生)をし、ブランド認知は菓子がされやすく農産品、水産品、調味料がされにくく、ブランド認知の程度により購買店舗に差異があり、ブランド認知された商品は他者への贈与のために購買される傾向がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画は、買い手の観光土産の評価基準と帰国後の越境ECによるリピート購買についての把握である。研究の手順は、まず、観光土産、知覚リスク、越境ECについての知識をさらに深めるために、文献調査およびこれまでの研究(JSPS科研費25501026)データをもとに分析をすすめた。次に、中国人留学生に対してヒアリングを実施し、調査項目の有効性について確認をおこない、これらをもとに、観光土産の評価基準モデルを検証モデルとして設定した。これらの知見をもとに、専門のインターネット調査会社に依頼し、平成28年に日本を訪れた中国人旅行者をスクリーニングにより抽出したのち、アンケート調査を実施した。 なお、当初の研究計画では収集したデータで消費者の特性や商品カテゴリの違いによる商品の評価基準にの差異などの分析をおこなう予定であった。しかし、最新のデータを収集し分析をおこなうことが必要であると考え、調査対象を平成28年に日本を訪問した中国人旅行者とした。そのため調査は平成29年2月の実施となり、本年度におこなう予定であった分析は平成29年度に引き続き実施する。 また、ブランド認知に関する分析結果から、ブランド認知において特徴的な事業者が明らかになったため、平成29年度に予定していた事業者へのヒアリングを当該事業者に対して前倒しで実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究は、受け手の観光土産の評価基準の測定と越境ECによるリピート購買についての把握をおこなうことを予定している。研究の手順は以下のとおりである。(1)観光土産、知覚リスク、越境ECについての知識をさらに深めるために文献での調査をおこなう。(2)初年度の買い手のリピート購買に関する課題をふまえた調査項目を設定し、インターネット調査をおこない、観光土産の評価基準、越境ECの知覚リスクについて把握し分析をおこなう。 さらに、インバウンド観光の観光土産の購買において、売り手と買い手、受け手の間の商品評価にギャップがあることを確認する目的で、売り手である事業者へのインタビュー調査を実施する。研究の手順は以下のとおりである。(1)文献調査や、買い手の調査結果をふまえたインタビュー項目を設定する。 (2)事業者へのアポイントとインタビュー調査を実施し、インタビュー内容の整理と分析をおこなう。平成28年度で得た買い手の調査結果を考慮し事業者の選定をおこなう予定である。 平成30年度は、研究の成果をまとめ、リピート購買促進のためのマーケティング施策の提案をおこなう予定である。具体的には、観光産業、インバウンド観光、消費者の知覚リスクについて、文献により知見を深める。さらに買い手、受け手、売り手の分析結果にもとづき、マーケティング施策の提案をおこなう。なお、研究期間において、調査データの分析をすすめ、分析結果の解釈ならびにマーケティング施策の立案等に関して、学会発表を3回、論文3本にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国人旅行者を対象としたインターネット調査を平成29年2月に実施し、調査会社への支払いが平成29年4月になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度分の助成金は、平成29年4月に使用済みであり、平成29年度の助成金は当初の計画どおり使用する予定である。
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