最終年度である30年度は、スイスでの追加調査と過去2年間における調査結果の総まとめを行った。 9月にスイスに出張を行った。ツェルマットのDMO(観光地域マネジメント組織)であるツェルマット観光局(Zermatt Tourismus)を訪問するなど、同地域における観光地域経営の実態について、本研究テーマの主題であるファイナンス(資金調達)の側面から調査を行った。とくに同観光局の財源になっている2つの税、滞在税(宿泊税)と観光促進税について、その性格(法理)や使徒について関係者から聞き取りを行った。合わせて他の地域との相違等についてもヒアリング等を行い、有益な知見を得ることができた。これにより、条文からは容易にはわからない点についても明確になるなど、有益な知見が得られた。なお、これらの税を規定する州法(ヴァリス州観光法)についてはすでに和訳を終えていたが、調査を踏まえて修正作業を行うことができた。さらには、近隣都市であるグリンデルワルトやインターラーケンのDMOを訪問し、ヒアリングを行うとともに関連資料を収集した。 出張終了後は、ツェルマットなどスイスの主要観光地域のDMOのアニュアル・レポート(年次報告書)など公表資料を和訳ならびに分析し、観光地域におけるマーケティング戦略について特徴点を明らかにした。また、海外出張を通じて「集積」という観点から観光地域を捉える必要があると考えるに至ったので、集積や産業クラスターに関する先行研究をレビューし、これを観光地域に当てはめて論じる際の論点整理を行った。 以上を踏まえて、国際比較の視点から観光地域経営に関する論点整理を行い、それに基づく学会報告を行うなど、研究成果について同じ専門分野の意見交換を行った。
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