研究課題/領域番号 |
16K02107
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
服部 健司 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90312884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 倫理学 / 臨床倫理学 / 解釈学 / ロマン主義 |
研究実績の概要 |
世界的にみると臨床倫理学の方法論には実にさまざまな流派がある。米国の動向にばかり注意を向けてきた本邦では、いわゆる四原則を取り込んだ四分割表が広く流布していて、他には方法がないかのような印象がもたれている。かかる状況下で解釈学的方法が顧慮されることはほとんどない。これに対して、ヨーロッパ北西部の国々とりわけオランダでは解釈学的方法は、臨床倫理学の方法論を主題とする成書でかならず取り上げられるものの一つである。 しかしよく注意してみると、同国で論じられる解釈学的方法が決して一様に理解されているわけでないことがみてとれる。それらの源流がどこにあるのかと遡って、1990年代半ば、ナイメーヘン(現ラドバウド)大学哲学部の倫理学者、パウル・ファン・トンヘレンとリーケ・ファン・デア・スヘーアらによって開発された方法にたどりついた。この方法は7ステップから構成されているが、前半でケースの語り手や関係当事者の視点や、語りの構造そのものを意識させ、さらには語りの細部の仮想的意図的変更が何をもたらすかを想像させるなど、文学的想像力を要求する手法である。後半では問題点の抽出、倫理学的概念の適用など、具体的かつ文学的な色合いから抽象的かつ倫理学的な方向へと転じる。 この方法と(基盤研究(C)25500001 「臨床倫理学的教育における解釈学的アプローチ法の構築と評価」において確立した)報告者の解釈学的方法との比較を試みると、両者の立脚点と目標の相違が明らかになった。ナイメーヘン大学方式では、解釈学的倫理学がその基礎にある。そこではわれわれの生をよりよいものにするために反省的な自己実現をはかるための場として臨床倫理のケースが位置づけられているのに対して、報告者の方式ではむしろケースそのものの内奥に肉薄することが眼目とされている。そのため後者では文学的、心理学的要素が大きいと言われることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床倫理学における解釈学的方法の諸形態の研究については成果をかたちにすることができている。近代解釈学の文献学的研究についてはテクスト読解を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
近代解釈学および初期ロマン主義の文献学的研究については着々とすすめていく。解釈学的臨床倫理学の方法論についてはオランダの研究者との討議を重ねていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた国際会議の要望演題が研究課題と異なっていたため、演題応募・参加を見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
解釈学的アプローチの立場をとる倫理学者2名との討議のためにオランダ・ナイメーヘンを訪問する予定である。
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