研究課題/領域番号 |
16K02107
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
服部 健司 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90312884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 倫理学 / 臨床倫理学 / 解釈学 / ロマン主義 |
研究実績の概要 |
臨床倫理学の方法に関して1980年代半ば以降、数多の流派を生んできたオランダで解釈学的アプローチはその命脈を保ってきた。これは他国には見られない特異的な現象である。何故ほかならぬオランダの地において解釈学がなおわれわれの日常的な生の中に根づいているのか。この問いは本研究において主要な問いであった。昨年度はヴァン・ダルテルら編著『よいケアについての対話を続ける』の初版(2003)ならびに第二版(2014)において解釈学的アプローチの章を担当したリーケ・ヴァン・デア・スヘーアへのインタビューを重ね、彼女とともに臨床ケースを検討する機会を得たが、今年度はパウル・ヴァン・トンヘレンへのインタビューが実現した。ヴァン・トンヘレンによれば、1960~70年以降に拍車がかかった世俗化と脱柱状化を背景にして神学者が哲学・倫理学に転向し、また人々は聖職者の代わりに精神科医と倫理学者とに教えを求めるようになった。一部の倫理学者は「倫理のエンジニア」を自称して人々に問題の解法を提供するようになったが、これに対して元来カトリックを基礎に建学されたナイメーヘン(現ラドバウド)大学は、歴史的に神学と親和性の強い解釈学の拠点となり、即時問題解決型から距離をおく立ち位置を続け、大学理事に神学者がもはや一人もいなくなった今日においても哲学部において解釈学研究者を複数擁している。かくしてオランダと解釈学と臨床倫理学とをつなぐ線を引くことができた。が、しかし臨床倫理学の解釈学的アプローチには宗教色は前景にない。解釈学的倫理学と、臨床倫理学における解釈学的アプローチとの関係性についてさらに検 討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オランダ・ナイメーヘン(ラドバウド)大学方式の解釈学的アプローチについて論文化したほか、学会や研究会のシンポジウムやワークショップの場でオランダの臨床倫理学の動向と実際について広く伝えた。
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今後の研究の推進方策 |
オランダと解釈学と臨床倫理学とをつなぐ線を引くことはできた。しかし臨床倫理学の解釈学的アプローチには宗教色は前景にせり出してはきていない。世俗化の流れのさなかに興隆した解釈学的アプローチを牽引する契機が、ロマン主義的解釈学の中に潜在していたのかどうか、ひとたびスピノザまで遡りながら、引き続き文献研究と、現地の研究者たちとの対話とを通して、解き明かしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議への参加予定を一件取りやめたため。
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