研究課題/領域番号 |
16K02108
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
加地 大介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (50251145)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 時相 / 時制 / 持続 / 様相 / プロセス |
研究実績の概要 |
『言語をめぐるX章』所収(pp.507-519)の論文「持続様相としての時相」において、存在論的観点から、時相(aspect)を実体的対象(substantial object)の持続(耐続)のモードとして性格づけることを試みた 。具体的には、その性格づけに基づいて構成される「プロセス論理(process logic)」の骨子を提示したうえで、同様に時相の論理として構成されたアントニー・ガルトンの「できごと論理(event logic)」との異同を通して、その主たる特徴を描き出した。 ガルトンは、それ自体は命題ではない「できごと根(event-radical)」に適用される「時相演算子(aspect operator)」によって時相を表現する「できごと論理」を構成した。彼はその際、本来的に完了的である「できごと」と本来的に未完了的である「状態」という二分法によって時相演算子の適用の可否を規定すると同時に、両者の相違を存在論的な区別としてはなく、どちらかと言えば「記述の方法」という言語的な区別として想定していた。 これに対し筆者は、「状態」をも含む広い意味での「プロセス」をひとつの存在論的カテゴリーとして捉えたうえで、プロセスを表現する述語を「プロセス述語」と呼び、いずれの時相表現もこのプロセス述語と個体定項を結合することによって命題を構成するコプラ的機能を果たすと考えた。その結果として成立する論理体系は、ガルトンの「できごと論理」に代わって「プロセス論理」というべきものとなる。 そして、プロセス論理における各時相コプラは、プロセスに参与する実体的対象における持続の様相の差違を表すと解釈され、それによって過去と未来の本来的な存在論的非対称性も表現することができることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真理の時間的変遷性の基礎となる時相命題についての分析を終えることができたので。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の分析を踏まえて、真理についての相対主義者マクファーレン、絶対主義者であるカペルンとホーソン、時間主義者であるブロガートの異同がどのような事情で発生するのかについて検討した後に、自身の立場を確定する。 また、真理付与関係の必然性について、それを形而上学的な根拠付け(grounding)に由来するものと考えるロドリゲス-ペレイラ、コレイアの立場、それを付随性(supervenience)によるものとしてその形而上学的な内実については否定的に捉えるビゲロウ、当初のルイスの立場、真理受容者としての命題の本質に由来すると考えるロウの立場などについて比較考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査・研究のための旅費の支出を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
調査・研究のための旅費として支出する。
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