研究課題/領域番号 |
16K02108
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
加地 大介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (50251145)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 実体的対象 / 持続 / 貫時点同一性 / 純粋生成 / 様相 |
研究実績の概要 |
時間的実在論の根幹を形成する実体的対象の持続(耐続)を次のように規定した:実体的対象の持続とは、複数の「時点」によって構成される時間的多世界モデルにおける、R. テイラーが言うところの「純粋生成」としての貫時点同一性である。ただしテイラーは、純粋生成とは「時間の中に存在するということのみによってすべてのものが被ると思われる時間上の経過」と説明していたが、本研究では、純粋生成する対象を実体的対象に限定したうえで「時間の中に存在する」ということを「複数の時点において貫時点同一性を保ちつつ存在する」ということとして解釈した。 そのうえで、このようにして規定された持続を、様相的観点から、実体的対象の(現在時点における)〈必然的持続としてのこれまでの持続〉・〈現実的持続としての目下の持続〉・〈可能的持続としてのこれからの持続〉という三種類に分類し、それぞれが時相コプラとしての背顧的・現行的・前望的コプラによって表される実体様相としての持続様相の源泉となること、および、これらのうち背顧的持続を源泉とする実体様相が過去様相、前望的持続を源泉とする実体様相が未来様相であり、現行的持続は両者にまたがる境界的な持続であることを主張した。そして、過去様相は本質様相の必然性に対して、未来様相は力能様相の可能性に対して、それぞれ並行性を示すことや、その並行性を反映する形で、過去様相が根拠づける事実様相と未来様相が根拠づける事実様相の論理体系がそれぞれS4 とS4.3 となることを示した。 さらに、ひとつの応用事例として、以上のような意味で持続する実体的対象の一種と考えられる「穴」についての因果論的考察も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間的実在論の根幹を形成する実体的対象の持続(耐続)についての分析を終えることができたので。
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今後の研究の推進方策 |
真理条件に代わって真理付与者(および虚偽付与者)を文の意味論的値として採用することによって、より柔軟できめの細かい意味論を構成できることが知られている真理付与者意味論を時制命題に対して構成し、「真でも偽でもない」と言うべき真理値空隙のケースを的確に処理することを試みる。「時点t において真(あるいは偽)である」ということを、「時点tにおいて真理付与者(あるいは虚偽付与者)が存在する」と考えることによって、未来の偶然性や過去の必然性を的確に捉えた形での意味論が構成できるのではないかと予測している。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会出席のための出張旅行ができなかったため。次年度には学会出席によって旅費として使用する予定である。
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