研究課題/領域番号 |
16K02112
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
宮崎 裕助 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40509444)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カント / フランス哲学 / 崇高論 / デリダ / 差延 / 家族 / 信 / 共同体 |
研究実績の概要 |
本研究の第二年度となる平成29年度の研究実績は、主に以下の二つの視点から、「共通感覚」の倫理にとっての歴史的および理論的な諸条件を解明したことにある。
第一に、共通感覚論にとっての歴史的に特権的なトポスとしてカント哲学をとりあげ、その系譜を再構成した(論文「フランス語圏のカント受容──「人間」以後の超越論哲学の行方」)。フランス語はカントが受容されたはじめての外国語だが、その背景と展開にはドイツ哲学とフランス哲学との対質があり、20世紀後半のカント受容とその展開として『判断力批判』の再読が決定的な重要性をもつ。本論文では、その再読の焦点は崇高論を中心とした感性論の再構成にあるということが示され、それを通じて本書の美感的感性論が、共通感覚論としてたんに友敵感情を媒介する調和の役割を果たすのみならず、まったき他者へと自己感情を開放する「不調和の調和」の可能性をもつということが見通された。
第二に、本研究の共通感覚論にとっての特権的な参照項であるジャック・デリダの言語論とその家族論とをとりあげ、共通感覚の倫理学にとっての諸前提を解明した(論文「差延、あるいは差異の亡霊──ジャック・デリダによるソシュール再論」および「家族への信──デリダと絆のアポリア」)。本研究にとってこれらの論文がもつ価値は、ひとつには、デリダのいう「差延」がコミュニケーション中心的な言語観を覆すものであり、そこから、本研究がテレパシーと呼ぶ感性的次元への問題提起が開かれることになるということ、もうひとつには、デリダが、他者との社会的紐帯の根本として家族共同体における「信」の感情に論及しており、家族形態の変容に応じて共通感覚の基礎としての「信」の感情が再定義されるということである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
後記するように、書籍での論考、学術雑誌の寄稿といったかたちで、成果を出すことができた。これは当初の計画で考えられていた水準をおおむね達成するものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、特記すべき問題等は生じなかったため、当初の研究計画通りに推進させる予定である。
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