研究課題/領域番号 |
16K02113
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
池田 真治 富山大学, 人文学部, 准教授 (70634012)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抽象の問題 / 数理哲学史 / 初期近代 / 数学 / 哲学 / ライプニッツ / デカルト |
研究実績の概要 |
本研究課題の中心テーマである、初期近代の抽象の理論に関する研究として、昨年度はライプニッツの抽象の理論を中心に研究を行った。その成果として、ライプニッツの抽象の理論における延長の概念と空間の概念に関する国際発表を行った(2017年9月)。また、ライプニッツの延長概念と抽象の理論について、これまでの研究の一部を論文にまとめ、所属大学の紀要に投稿した(2018年8月出版予定)。 また、本研究課題のコンテクストを支える、初期近代の数理哲学史に関する研究として、デカルトの初期数学論について、コンパスという数学的道具とデカルトの代数幾何学の関係に注目した論文を『理想』699号に発表した(2017年9月)。加えて、『デカルト 数学・自然学論集』(法政大学出版局、2018年3月出版)において、初期デカルトの遺稿である『思索私記』および『立体の諸要素についての練習帳』を担当した。さらに、ライプニッツの無限小概念について、最近の研究を踏まえて再考したものを『ライプニッツ研究』に投稿し、掲載が確定した(2018年11月出版予定)。 また本研究課題の現代的意義に関わる研究として、ライプニッツとヘルマン・ワイルの連続体概念に関する比較研究を、国際ワークショップにおいて英語で発表した(2017年11月)。 なお、本課題に関する国際的な共同研究交流の推進として、フランスのCNRS・パリ第8大学所属のダヴィド・ラブーアン氏と連絡をとり、2019年春頃に日本で公開授業やワークショップ、シンポジウムを行う方針で、現在交渉が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ライプニッツの抽象の理論に関する包括的研究を行うためには、ライプニッツ以前の抽象の理論、および、同時代の哲学における「観念」をめぐる論争を整理することが不可欠であるが、当初の見込みより膨大かつ難解なテーマであることが分かった。 また、本研究の現代的な意義を見定めるためには、現代の認知科学や情報科学における概念や抽象化の問題をより一層理解する必要を感じ、そちらの方向での勉強に時間を費やす必要があった。 ただ、本研究課題と関わる、概念形成の問題や、数学と哲学が密接に関係する無限小・連続体といった抽象的対象に関する研究をも並行して進めており、次年度以降予定している研究計画を先取っている部分もある。 そのため、当初の研究計画にある予定よりやや遅れてはいるものの、全体としてはおおむね良好に進捗しており、十分に遅れを取り戻せる範囲内にあると感じている。
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今後の研究の推進方策 |
ライプニッツの抽象の理論について、これまでの研究成果を論文というかたちでまとめる。その上で、ライプニッツ以前の抽象の理論、および、同時代の哲学における「観念」をめぐる論争などを研究ノートというかたちで順次整理し、初期近代における抽象の問題の全体像を得ることにつとめたい。 初期近代の抽象の問題は、デカルトからカントへの展開を視野に入れる必要がある。デカルトにおいてアリストテレス主義の伝統的な抽象の理論が否定され、直観的明証をもつ数学が方法のモデルとされる。そして、カントの超越論哲学において直観を基礎とする認識論が確立する。そこでは、「抽象から直観へ」という哲学史上の転換があるのであり、こうした大きな流れの中で、ライプニッツの独自な抽象の理論を考察する必要がある。 抽象の理論と関連して、初期近代における数学の位置付けに関しても、論文あるいは研究ノートというかたちで、研究成果を発表していく。 本課題と関わる数学と哲学が交差する具体的なテーマとして、無限小や連続体の概念について、引き続き研究を行なっていく。これに関しては、「連続体の哲学史」というものを構想しているが、ライプニッツを軸として、カントやパース、ヘルマン・ワイルなどの連続体概念と比較研究をしていく。 また現在、本研究課題の初期近代の数理哲学の世界的研究者であり、「普遍数学」思想のエキスパートであるパリ・CNRSのダヴィド・ラブーアン氏を日本に招いて、国際的な共同研究を行う準備を進めていきたい。
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備考 |
LABURYNTHUS IMAGINATIONISは個人の研究ブログ。 labyrinthus imaginationisは個人のホームページ。
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