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2016 年度 実施状況報告書

認知症ケアを契機とした生命倫理学の刷新―新しいケア文化のかたちを求めて

研究課題

研究課題/領域番号 16K02115
研究機関静岡大学

研究代表者

松田 純  静岡大学, 人文社会科学部, 特任教授 (30125679)

研究分担者 堂囿 俊彦  静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (90396705)
中村 美智太郎  静岡大学, 教育学部, 講師 (20725189)
宮下 修一  中央大学, 法務研究科, 教授 (80377712)
青田 安史  常葉大学, 健康科学部, 准教授 (90551424)
天野 ゆかり  静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 助教 (60469484)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード倫理学 / 生命倫理学 / 認知症 / 自律尊重
研究実績の概要

自律尊重原則についての従来の理解を検討し直し、認知症の進行過程においても本人の思いと自律が生活の広い分野で尊重され、自己決定を行使する能力をできるだけ長く保てるような支援をめざし、ケアの専門職の倫理的対応力の向上に理論的な基礎を提示する課題に取り組んだ。
1.認知症ケアの現場で発生している困難なケースをモデル化して、倫理的・法的な考え方と対応のポイントをまとめたケースブックの作成・編集を行った。当初、平成29年度刊行の予定であったが、当該課題の社会的ニーズの高まるなか、課題の緊要性をふまえて、作業を加速し、予定より早く刊行することができた(『ケースで学ぶ 認知症ケアの倫理と法』南山堂、2017年3月25日刊行)。
2.判断力が低減した人の意思について、その捉え方、意思決定支援のあり方、成年後見制度の活用などの観点から理論的検討を重ねた。このテーマは、社会情勢や学会動向からみて、きわめて重要かつ喫緊の課題であることが一層明らかになった。自己決定を理性的判断に基づく合理的判断として一義的に狭く理解するのではなく、反省以前の即時的判断や、情動レベルの意思、ドイツ法の「自然的意思」など多層的なレベルで捉え直す必要がある。こうした研究成果を学術論文、学会発表、市民を対象とした啓発的な講演などで発表した。
3.本課題をグローバルな視点からも研究するため、ドイツから専門家を招聘し、ドイツや専門職と情報を共有することを目指し、公開講演会を開催した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

『ケースで学ぶ 認知症ケアの倫理と法』を、計画より早く平成28年度末に刊行できた。
ドイツから専門家を招聘し、認知症をめぐる課題をグローバルな視点から検討するとともに、公開講演会を開催することで、現場の専門職や関連分野の研究者との交流ももてた。
理論的研究の成果も一部発表できた。

今後の研究の推進方策

従来の自律尊重原則と理性的人格論の見直しなど、認知症が提起する諸課題に関する理論研究を行い、その成果を関連学会や学術論文等で発表する。研究者および専門職と合同で当該テーマを中心とするシンポジウムを開催し、問題意識を共有し、意見を交換する。
刊行したケースブックは,当該分野の多職種の研修教科書として利用されることも期待している。ケースブックについての現場の専門職や専門研究者の感想を聞き、評価も受けながら、研究成果の検証を行う。
グローバルな視点からの検討も継続し、海外の実態調査と新しい理論的成果の収集・理解に努める。

次年度使用額が生じた理由

倫理的・法定問題をはらむ具体的な事例を各地の現場で収集するための旅費支出も予定していたが、地元の専門職(研究協力者)から、予定より多くの事例を収集できたため、予定していた旅費を節約できたため。

次年度使用額の使用計画

平成29年度に、ケースブックを現場の専門職とともに検証する作業のために使用する。

  • 研究成果

    (26件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (13件) (うち謝辞記載あり 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件) 図書 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 尊厳死と安楽死――「死ぬ権利」の法制化は「尊厳ある最期」を保障できるか2017

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 雑誌名

      思想

      巻: 1114 ページ: 74-97

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 理学療法の倫理2017

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 雑誌名

      理学療法ジャーナル

      巻: 51-1 ページ: 67-72

  • [雑誌論文] 道徳教育における内容項目「自由」「自律」に関する基礎的研究2017

    • 著者名/発表者名
      中村美智太郎・藤井基貴
    • 雑誌名

      静岡大学教育学部研究報告(教科教育学篇)

      巻: 48 ページ: 75-87

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 道徳教育の史的変遷と現代的課題――道徳科における情報モラル教育の可能性2017

    • 著者名/発表者名
      酒井 郷平・田中奈津子・中村美智太郎
    • 雑誌名

      道徳教育の史的変遷と現代的課題――道徳科における情報モラル教育の可能性

      巻: 68 ページ: 105-119

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 介護業界が求める人材、学生が働きたいと思う介護現場とは?2017

    • 著者名/発表者名
      比留間洋一・天野ゆかり
    • 雑誌名

      静岡発!外国人と共に変化していく介護業界の現在 ――ふじのくにEPAネットワークの取組

      巻: 30 ページ: 43-44

  • [雑誌論文] 遺産分割協議・相続放棄と詐害行為取消権・再考2017

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 270 ページ: 281-298

    • DOI

      10.18999/nujlp.270.17

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 医療・介護・保健分野におけるビッグデータの活用と患者の権利 ――モノのインターネット(IoT)の先にあるもの2016

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 雑誌名

      生命倫理・生命法研究資料集

      巻: Ⅱ ページ: 33-56

  • [雑誌論文] 「人間の尊厳」と討議2016

    • 著者名/発表者名
      堂囿 俊彦
    • 雑誌名

      生命倫理

      巻: 26(1) ページ: 26-36

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 子の福祉と医療2016

    • 著者名/発表者名
      堂囿 俊彦
    • 雑誌名

      文化と哲学

      巻: 33 ページ: 73-95

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ベトナム高齢者施策の進捗状況:ダナン市の事例2016

    • 著者名/発表者名
      天野ゆかり、比留間洋一
    • 雑誌名

      静岡県立大学短期大学部研究紀要

      巻: 30 ページ: 45-58

  • [雑誌論文] 生活期リハビリテーションにおける要介護高齢者に対する自立支援と自己決定―理学療法士の視点から―2016

    • 著者名/発表者名
      青田安史
    • 雑誌名

      静岡理学療法ジャーナル

      巻: 33 ページ: 1-11

  • [雑誌論文] 早期離床に向けたリハビリテーションの実際2016

    • 著者名/発表者名
      青田安史,平野幸伸、内田全城
    • 雑誌名

      認知症介護

      巻: 17 ページ: 43-55

  • [雑誌論文] 合理的な判断をすることができない事情を利用した契約の締結2016

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 88-12 ページ: 37-43

  • [学会発表] 高齢者の褥瘡・拘縮予防のケア2017

    • 著者名/発表者名
      天野ゆかり
    • 学会等名
      ズイタン大学看護学部 日本介護セミナー
    • 発表場所
      ズイタン大学(ベトナムダナン市)
    • 年月日
      2017-03-06 – 2017-03-06
    • 国際学会
  • [学会発表] 技能実習制度によるベトナム人介護人材の戦略的受入に関する基礎研究2017

    • 著者名/発表者名
      天野ゆかり
    • 学会等名
      平成28年度全国老人福祉施設研究会議 長崎会議
    • 発表場所
      長崎ブリックホール(長崎県長崎市)
    • 年月日
      2017-01-25 – 2017-01-25
  • [学会発表] 福祉と尊厳2016

    • 著者名/発表者名
      堂囿 俊彦
    • 学会等名
      第28回日本生命倫理学会 2016年12月4日
    • 発表場所
      大阪大学吹田キャンパス(大阪府吹田市)
    • 年月日
      2016-12-04 – 2016-12-04
  • [学会発表] 尊厳死と安楽死 -- 「死ぬ権利」の法制化は「尊厳ある最期」を保障できるか2016

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      一橋大学政策フォーラム
    • 発表場所
      一橋大学(特許都国立市)
    • 年月日
      2016-10-22 – 2016-10-22
    • 招待講演
  • [学会発表] 終末期におけるケア~安楽な姿勢から見えてくるもの~2016

    • 著者名/発表者名
      天野ゆかり
    • 学会等名
      第4回全国介護・終末期リハ・ケア研究会研究大会
    • 発表場所
      コクヨホール(東京都港区)
    • 年月日
      2016-09-25 – 2016-09-25
  • [学会発表] 病気を持っていても元気だといえる人生2016

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      オレンジカフェ(認知症カフェ)
    • 発表場所
      ハピスポ(静岡県静岡市)
    • 年月日
      2016-09-18 – 2016-09-18
    • 招待講演
  • [学会発表] 世界はどう変わるか――AI,医療におけるビッグデータ、IoT(モノのインターネット)2016

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      静岡大学公開講演会
    • 発表場所
      静岡大学(静岡県静岡市)
    • 年月日
      2016-07-11 – 2016-07-11
    • 招待講演
  • [学会発表] ロボットスーツHAL開発研究の倫理的意義――新しい健康概念に照らして2016

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      第53回医学系大学倫理委員会連絡会議
    • 発表場所
      ロイトン札幌 (北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-07-02 – 2016-07-02
    • 招待講演
  • [学会発表] Ethical, Legal and Social Issues of Big data and IoT in medicine and healthcare2016

    • 著者名/発表者名
      Jun Matsuda
    • 学会等名
      ドイツ学術交流会DAAD 東アジア会議「第四回ライフサイエ ンス・シンポジウム」 工学、医学、自然科学におけるライフサイクル・マネジメント
    • 発表場所
      東京ドイツ文化会館センター ホール(東京都港区)
    • 年月日
      2016-06-03 – 2016-06-03
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] ケースで学ぶ 認知症ケアの倫理と法2017

    • 著者名/発表者名
      松田純、堂囿俊彦、青田安史、天野ゆかり、宮下修一、中村美智太郎、中島孝、飛永雅信、古田 精一、神馬幸一、加藤尚武、奥山惠理子、相澤出、日笠晴香、石垣泰則、大塚芳子、大塚芳正、上藤美紀代、髙井由美子
    • 総ページ数
      173(i-xiv,1-159)
    • 出版者
      南山堂
  • [図書] 入門・医療倫理〔改訂版〕2017

    • 著者名/発表者名
      堂囿 俊彦、赤林朗
    • 総ページ数
      412(73-94)
    • 出版者
      勁草書房
  • [図書] 消費者法判例インデックス2017

    • 著者名/発表者名
      宮下修一・松本恒雄・後藤巻則
    • 総ページ数
      288(50-51)
    • 出版者
      商事法務
  • [備考]

    • URL

      http://life-care.hss.shizuoka.ac.jp/index.php

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公開日: 2018-01-16  

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