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2016 年度 実施状況報告書

スアレスからヒュームまで:スコラの因果論を踏まえたイギリス経験論哲学史の再検討

研究課題

研究課題/領域番号 16K02117
研究機関三重大学

研究代表者

秋元 ひろと  三重大学, 教育学部, 教授 (80242923)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードスコラ学 / アリストテレス主義 / 形而上学 / 因果論 / ホッブズ
研究実績の概要

本研究は,中世以来のスコラ学の伝統,とくにその因果論に着目し,それとの関係という観点からイギリス経験論を再検討することによって,イギリス経験論の歴史をロック,バークリ,ヒュームというトリオの仕事と見なす標準的解釈に代わる哲学史記述の可能性を明らかにすることをを目的とする。
研究初年度である28年度は,近世スコラ学と対決してイギリス経験論を準備した哲学者であるホッブズを取り上げ,スコラのアリストテレス主義の因果論の検討を踏まえて,それとの対比という観点からホッブズの因果論がもつ特徴を明らかにした。
スコラの因果論は,アリストテレス主義の変化の捉え方を基本とするものである。つまり,質料・形相の概念を用いて,変化を可能性 potentia から現実性 actus への移行として捉えた上で,変化の原理として四原因(質料因,形相因,作用因,目的因)を位置づけ,因果関係(作用因)を可能性としての力 potentia が現実に発揮されることとして説明する。
これに対して,アリストテレス主義の形而上学の諸概念(実体,偶有性,質料,形相等)を物体とその偶有性に還元したホッブズは,可能性と現実性の概念も,物体と偶有性を基本概念とする自らの形而上学の内部に取り込み,変化を,もっぱら物体がもつ偶有性の入れ替わりとして,さらには物体の運動状態の変化として唯物論的・機械論的に捉えた。その結果ホッブズは,因果関係(作用因)もこれと同様の観点から捉えて,アリストテレス主義とは基本的に異なる因果論を展開したのである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

スコラの因果論の特徴を明らかにするという28年度の計画をおおむね達成することができた。29年度に継続して実施するデカルトの因果論の検討に向けて関連テクストの読解も行うことができた。
ホッブズの因果論の検討に時間を要したため,近世スコラを代表するスアレスの著書『形而用学討論集』の因果論を論じた部分の読解作業にやや遅れが生じたが,29年度の研究において十分取り戻すことが可能である。28年度にホッブズの因果論を詳しく検討したことは,29年度に継続して実施するデカルトの因果論の検討にも役立つと予想している。

今後の研究の推進方策

当初の計画通り,デカルトとバークリの因果論の検討を行う。
デカルトについては,『省察』(とくに第三省察)と『哲学原理』(とくに第1部と第2部)を基本テクストとして,スコラの因果論との対比,ならびにホッブズの因果論との対比という二つの観点から,デカルトの因果論について検討する。ホッブズが神を哲学の領域から追放したのに対して,デカルトは,第一原因としての神について語り,その点ではスコラの伝統を引き継いでいる。それでは,スコラとデカルトの因果論の違いはどこにあるのか,この点の解明が課題となる。
バークリについては,機会原因論として知られるマルブランシュの因果論との異同を明らかにするため,『人知原理論』『ハイラスとフィロナスの三対話』などの基本テクストの読解作業を進める。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] ホッブズの形而上学―彼の自然学のまえに置かれ,あとに完成される学問2017

    • 著者名/発表者名
      秋元ひろと
    • 雑誌名

      三重大学教育学部研究紀要

      巻: 68 ページ: 21-38

  • [学会発表] ホッブズ『リヴァイアサン』の読み方2016

    • 著者名/発表者名
      秋元ひろと
    • 学会等名
      三重哲学会
    • 発表場所
      三重大学(津市)
    • 年月日
      2016-07-09 – 2016-07-09

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公開日: 2018-01-16  

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