研究課題/領域番号 |
16K02118
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
戸田 剛文 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (30402746)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 哲学 / 近代哲学 / 常識 / 認識論 |
研究実績の概要 |
本年度は、近代の常識哲学の代表的哲学者であるスコットランドの哲学者トマス・リードの常識についての議論を中心的に研究した。リードは、その主著『人間の知的能力試論』の中で、常識を自明な命題を知る判断能力として位置付け、蓋然的な第一原理と必然的な第一原理を設定し、知識の基礎とした。特に、蓋然的な第一原理に基づく知識観は、デカルトのように同じく第一原理をさだめてそこから知識の体系を構築しようとする哲学者と類似した側面を持ちながら、一方で、その知識観については、大きな変更を行なっている。それは可謬的な知識観である。リードは、常識を自明な知識を理解する判断力として捉え、そこから導き出される命題を第一原理として捉えている。そしてその第一原理と偶然的な第一原理と必然的な第一原理にわけるが、本年度はとくにその中の偶然的な第一原理に注目し、リードのその思想における問題点を詳細に検討した。 さらに、上述したように、常識哲学は、しばしばその可謬主義的な知識観と結びつくが、本年度は、リードと同じく常識に強い敬意を払い、可謬主義的な知識観を展開しているカール・ポパーの知識観ととりあげ、リードの可謬主義と対比させた。リードとポパーという二人の哲学者は、同じく可謬主義者でありながら異なる側面を有している。その違いを考察しつつ、上述したリード哲学が持つと考えられる問題点をどのように捉えることができるのかということを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古典的な常識哲学の代表者であるリードの常識についての言及を考察し、それによってリードの可謬主義の内実について明らかにするとともに、現代の可謬主義哲学者であるポパーの議論を対比させ、われわれの知識観における常識の役割について明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で取り上げたカール・ポパーの可謬主義についてさらに検討し、常識がその中でどのような地位にあるのかを検討する。ポパーは、自分の立場について批判的常識主義という言葉で言及することがあるが、そういった考えに、彼がしばしば言及するアメリカの古典的プラグマティストであるパースの思想が影響を与えている可能性について考察し、常識哲学が現代においてどのように影響を与えているかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究書籍が在庫がなかったため。引き続き、入手の可能性を探る。
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