研究課題/領域番号 |
16K02122
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
入谷 秀一 龍谷大学, 文学部, 講師 (00580656)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コーネル / 想像力 / フェミニズム / ポルノグラフィー / アドルノ |
研究実績の概要 |
提出済みの研究実施計画に従い、本年度は、現代のフェミニズムの文脈における批判理論(特にアドルノ)の位置価を確認した。さらに、批判理論メンバーが最も活発に活動を行っていた1930年代におけるフェミニズム的議論の掘り起しに従事した。具体的には、8月に批判理論研究会第30回研究例会(大阪大学)において「フェミニストはアドルノをどう読んだか――ドゥルシラ・コーネルへのインタビュー」と銘打って、現代英語圏を代表するフェミニストであるコーネルのインタビュー(Renée Heberle (ed.), Feminist Interpretations of Adorno, 2006に収録)を全訳し、メンバーと活発な議論を行った。さらに、様々な国内学会への参加を通して、現代のフェミニズム運動や性の問題に対する知見を深め、広くフェミニズム一般の問題圏への討議を図る上でのネットワーク作りに従事した(代表的なものでは、日本倫理学会第67回大会(早稲田大学)ワークショップ「性差別と倫理」、そして立命館大学生存学研究センター主催、フェミニズム研究会第8回(2016年度・第3回)公開研究会「性における差別と支配:ヴァルネラビリティをめぐって」など)また、当該年度の5月には共著『21世紀の哲学をひらく――現代思想の最前線への招待』(ミネルヴァ書房)が出版され、研究代表者の論考が第8章「批判理論――アドルノ、ホネット、そしてフランクフルト学派の新世代たち――」として掲載された。これは、論考こそ前年度に用意されたものであったが、1930年代の批判理論の活動内容を俯瞰する意味で、本年度の研究の極めて有効な地盤となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
若干遅れているというのは、当該年度において論文や学会発表という仕方での配信が比較的少ないという意味であり、当初計画していた研究(1930年代のドイツ・社会研究所内での批判理論メンバーのフェミニズム的議論の整理、アドルノの書簡から垣間見れるセクシャリティの検証、等々)は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
全体的に見れば、やや緩やかな進捗状況だと言えるが、2017年上半期に上梓予定の論文「女たちの影、女という影――アドルノのセクシャリティを覗く(1)」(龍谷紀要39巻1号)では、2016年度研究計画書の研究目標に従った成果が報告される予定となっている。30年代当時にアドルノがE・フロム、M・ホルクハイマー、H・マルクーゼらと共有した問題関心、すなわち、ファシズム体制化における性の扱い、そして女性的なものの物象化に関する社会分析が、この論考では中心的に論じられている。次年度では、この考察の流れに接ぎ穂をする形で、20世紀後半のフランクフルト学派が性や身体などに関してどのような社会分析を展開してきたのか、丹念に追跡したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品(図書資料等)の購入に比して、学会参加等の費用が比較的抑えられたことが原因であると考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は海外の国際学会への参加等の含め、研究会への参加の頻度を上げてゆきたい。
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