ハーバーマス以降の批判理論の流れにおいては、討議の手続きや合意のための状況整理など、形式的な議論が先行し、批判理論が当初もっていた社会批判という実質が失われつつある。他方で主に(ドイツではなく)英米圏では、主としてフェミニストやフェミニスト系の精神分析家によって、批判理論の生産的な継承が試みられている。彼女らは、まさに社会を生きる個人の痛みやその(身体的な)表現につきそう、というアドルノ以来の課題を、フェミニストならではの視点から捉えなおそうとしている。本プロジェクトはこうした試みをマッピングすることで、見取り図が不透明になりつつある批判理論の未来に、一定の見通しを付与するものである。
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