研究課題/領域番号 |
16K02126
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大西 克智 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (60733996)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自由意志 / モンテーニュ / 神学と哲学 / 信と知 / 意識と良心 / デカルト / アンセルムス |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、今年度も「意志と自由の系譜学」構想の一環として、当初『モンテーニュー魂の軌跡』と題する予定であったモンテーニュに関するモ ノグラフを、『『エセー』読解入門ーーモンテーニュとヨーロッパの精神史』と改めて、執筆を継続した(本書は講談社選書メチエより刊行される予定となっている)。 古代末期(アウグスティヌス)以降、自由意志の問題は、宗教(神学・信)と哲学(知)との関係、神と人間との関係、キリスト教文化圏と先立つギリシャ思想圏との関係など、哲学の存立に関わる重要な対比項を巻き込んできたが、その全体像を出来る限り大きく描く作業を、現在進行中のモンテーニュ論を通じて、進めてきた。 その観点から、今年度は、一方で、「意識」ないし「自己意識」と「良心」との関係(「意識」と「良心」は、ギリシャ語、ラテン語、フランス語において、同一の単語が双方の意味を担うことにも見て取れるように、極めて密接な関係にある)についての研究に、他方で、神学と哲学との関係についての研究に、それぞれ着手し、「意志と自由の系譜学」を今後拡張する方向性を探った。 その「意識」と「良心」に関しては、九州大学哲学会大会(2019年9月)にて、アウトライン的発表を行い、2020年9月に刊行される同会年報に論文として、異なる角度から掲載される予定である。神学と哲学との関係については、2020年5月刊行予定の『世界哲学史 5』第6章に、この関係の中世から近世に至る推移の核心部分に関する分析結果を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述したモンテーニュ論の執筆に、当初予想していた以上の下調べがさまざまな方面で必要になり、全体として執筆ペースが落ちたことは否めず、そのために一年度の延長を申請する結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、遅れは生じたものの、その間に得たもろもろの知見(とりわけ、意識と良心の関係、および神学と哲学の関係、それぞれをめぐる諸問題について)は、モンテーニュ論を通じた「意志と自由の系譜学」構想の視野を拡大する上で、非常に重要なものであった。それらを活かしつつ、モンテーニュのモノグラフを完成し、同構想の基盤形成に関する作業を一段落させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「意志と自由の系譜学」構想の一環として遂行してきたモンテーニュ研究の完成(単著の執筆と刊行)にこぎつけるために、計画を一年延長した。次年度使用額は、この完成に至るまでの間に必要となる資料の収集に充てる予定である。
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