研究課題/領域番号 |
16K02134
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
矢嶋 直規 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10298309)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒューム / バトラー / 蓋然性 / 思惟可能性 / 自然神学 / 理神論 / イギリス経験論 |
研究実績の概要 |
2019年度は9月22日中国中山大学で開催された第6回日中哲学フォーラムにおいてHume's Conceivability Principle"と題する発表を行った。思惟可能性が現実性の根拠となっていることをヒューム哲学の全体像を踏まえつつ大陸合理論との対比によって論じ、中国人研究者と意見交換を行った。10月4日には山口大学で開催された日本倫理学会における「近代イギリス道徳哲学における名誉概念」と題するワークショックに実施責任者として参与した。10月16日には国際基督教大学において英国エディンバラ大学神学部長、デーヴィッド・ファーガソン教授及び米国プリンストン神学大学、ゴードン・グレアム教授を招聘し、「スコットランド啓蒙における哲学と神学の対話」と題するシンポジウムを開催した。このシンポジウムには国内から多くの隣接分野の研究者の参加を得た。二人の講演者の発題に基づき、ヒュームとスミスにおけるキリスト教神学の重要性を哲学と思想史の両面から明らかにした。日中哲学フォーラムでの発表をもとに論文Hume's Conceivability Principle: a Preliminary Consideration”,Humanities: Christianity and Culture (Vol.51)を発表した。これらの発表を通して、ヒューム哲学が合理論における確実性の概念にかわる蓋然性に基づく体系であることを哲学史に基づいて論証した。さらにヒュームの蓋然性の概念が、自然神学をめぐる同時代の論争への批判において展開したことを示すことができた。 2019年度の研究によって、17世紀合理論がヒュームにおいて蓋然性に基づく経験論に転換する背景としての自然神学論争の重要性を明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は国際学会での発表が一度、国内学会でのワークショップの開催が一度、国際シンポジウムの開催が一度、および紀要論文の公刊があり、ヒューム哲学と同時代の自然神学論争との関係を論じることができた。蓋然性に基づく理論はヒューム以降ではスコットランド常識哲学へと発展することが示された。経験論の成立がが神の存在証明をめぐる神学論争を舞台とすることを明確にすることで、英国経験論の発展史に従来論じられてこなかった形で新しい視点を提示することができた。 スコットランド哲学における哲学と神学の関係を主題とするシンポジウムを開催し蓋然性概念を軸に哲学と神学が相互に影響を与えつつ展開したことを示した。このシンポジウムにより、哲学・倫理学だけでなく、社会思想史の研究者とも研究交流を持つことができた。また従来主題的に取り上げられることがなかった近代イギリス哲学における哲学と神学の関係を、本件乳に基づく発展的な研究課題とすることができた。この研究成果は、2020年度の国際スコットランド哲学会の国際会議で発表することが受理されている。 ヒューム哲学をめぐる合理論と経験論の相克の過程を新たな視点から提示し、論文にまとめることができたことは研究課題の順調な進展と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は昨年度までの研究成果の一つであるヒュームとバトラーの関係を蓋然性の概念をもとにして整理する。この研究は、査読付きの国際学会(国際スコットランド哲学学会)で発表することが確定している。その発表を論文にまとめ発表する予定である。その際、本研究の発展的主題である近代英国哲学における哲学と神学の関係についての考察を盛り込む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の成果発表を、2020年6月米国プリンストンで開催予定であった「国際スコットランド哲学学会」で発表することとしたため。
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