交付申請書の研究計画欄では、本研究助成における三つのプロジェクト――1. 一般種概念と個々の種の定義の関係、2. 「種問題に対するパーフィット的還元主義」の提起、3. 生態学における種――について記した。2018年度は主に2.で具体的研究実績があったのでそれについて述べる。 2. 「種問題に対するパーフィット的還元主義」の提起。研究代表者と研究分担者は、種問題に哲学者デレク・パーフィットの人格の同一性についての還元主義的説明を応用する共著論文を執筆している。これについて論文草稿を第四回東アジア現代哲学会議(2018年8月、於国立政治大学、台湾)にて “What can species theorists learn from Parfit?”と題した発表を行った。さらに国内でも「種の論争はパーフィットから何を学べるか」と題した発表を生物学基礎論研究会(2018年9月、統計数理研究所)および日本科学哲学会(2018年10月、於立命館大学)にて行った。現在は上記発表におけるコメントなどをもとに草稿をブラッシュアップし、早期に投稿することを目指している。 また研究代表者は本プロジェクトの着想の源の一つである認知心理学における二重過程説と科学者の思考様式の関係について、「『理性の進化』をめぐる方法論的問題」と題する発表を科学基礎論学会秋の例会(2018年11月、日本大学)で、「『人間の心の進化』研究の哲学的検討」と題する発表を三田哲学会(同、慶應義塾大学)で、“Did Social Factors Form the Reflective Mind?”と題する発表を中国・南京大学(2018年12月)にて行った。 さらに研究代表者はこれまでの種問題についての研究を研究書として勁草書房から出版する計画が進んでいる。原稿は完成に近づいており、2019年度中に原稿を送付する予定になっている。
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