「哲学」という語そのものを創案しつつ、西洋哲学を日本に始めて導入した西周の仕事の意味は、彼がまさに「哲学」で意味しようとしたことに依存する。西はオランダで出会い学んだ、当時隆盛の実証哲学、とりわけオーギュスト・コントの実証哲学を受け入れ、コントの意味での「哲学」を日本に導入しようとした。すなわちそれは、形而上学的哲学ではなく、それ自身が科学である実証的哲学であった。しかもその際に、西はコント以上に実証的であろうとしたのであって、諸科学を科学的に統一する場所を、コント自身が創設した社会学にではなく、むしろ生理学・心理学に求めた。本研究の何よりの成果は、西の「哲学」のこうした全体像の解明である。
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