研究課題/領域番号 |
16K02141
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
村田 純一 立正大学, 文学部, 教授 (40134407)
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研究分担者 |
柳澤 田実 関西学院大学, 神学部, 准教授 (20407620)
板橋 勇仁 立正大学, 文学部, 教授 (30350341)
田口 茂 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (50287950)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学と宗教 / 日本哲学 / 西田幾多郎 / 田辺元 / 下村寅太郎 |
研究実績の概要 |
本件研究の課題は、科学技術の発達した現代世界のなかで持つ宗教の意味と位置を解明することにある。さらには、この課題を特に日本という文脈を考慮して行うために、日本哲学における科学と宗教の関係をめぐる問題に焦点を合わせる。 昨年度は、主に日本哲学における科学と宗教の関係をめぐる問題を理解することを試みた。具体的には、2017年6月にアメリカの西田哲学の研究者であるJ. Krummel教授を招聘して、連続講演会を行った。また、2018年3月には、研究分担者の板橋勇仁氏による下村寅太郎における科学と宗教、ならびに田口茂氏による田辺元における科学と宗教をめぐる問題に関する発表と議論を行う研究会を開催した。どちらも、公開で行った。 6月9日のKrummel氏の講演会では、西田の場所論をキアスム的場所論と解釈するkrummel氏の西田解釈を巡って、森里武氏並びに白井雅人氏による批判的なコメントをもとに議論が行われた。6月10日の講演会では、そうした西田解釈をさらに発展させた"Kenotic Chorology as A/theology in Nishida and Beyond"と題された発表が行われた。この発表では、西田にみられる無の場所における無化を通しての存在の成立という論理をKenotic Chorologyとして特徴づけ、このような論理が、否定神学をはじめ現代の哲学的思惟や、さらには神の死をテーマとする議論に至るまで様々な仕方で見られることが論じられた。とりわけ、Kenotic Chorologyという考え方は、科学と宗教という仕方でしばしば安易に語られる対立図式とは違った仕方で、現代の科学技術の発展した世界で、地球環境問題や自然に対する人間の責任を論じる際にも示唆を与えてくれる可能性を持つものとして、今後議論を深めていく必要のあることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた講演会や研究会を実施することができた。それによって、西田哲学の射程の広さや、下村寅太郎や田辺元における科学並びに宗教の位置づけへの理解を深めることができた。これらの理解を基礎として、より広い視点で、日本における科学と宗教の問題の意味をさらに探究することが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、本研究の最後の年度になるので、これまでの成果を踏まえて研究のまとめを行う必要がある。同時に、現在様々な形で進められている宗教に対する科学的研究、例えば、脳科学から見た宗教の位置づけなど、理解しておくべき課題も多い。そこで、脳科学などの分野に詳しい専門家を呼んで研究会を行うことなど、視野をさらに広げる試みを推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度には、代表者の村田純一ならびに分担者の板橋勇仁が国際会議への出席を予定しており、海外出張に必要なまとまった金額を確保するために繰り越しを行った。
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