本研究「生命と健康に関わる倫理コンサルテーションの価値構造についての研究」は、医療における倫理的問題解決のための「倫理コンサルテーション」のもつ倫理的構造を明らかにすることを目的にする。最終年度である平成30年度は、昨年度に引き続き、コンサルテーションに至る前の段階でのファシリテーションの役割に着目し、2つの観点から考察を行った。その一つは、看護師に求められるファシリテーション能力についてである。合意形成を組み込んだ倫理研修の分析から、看護師に求められる能力として、内在化した価値を引きだして、言い換えて、重要な言葉をつかんで、正確に伝えるというコミュニケーション能力、何か倫理的に問題かもしれないと気づいたときに行動することを助ける能力、日々の実践のなかに気づきや発見を取り入れる能力であることを明らかにした。本結果は、19th International Nursing Ethics Conferenceにて、発表した。 もう一つの観点は、医療の合意形成を組み込んだときのファシリテーションとコンサルテーションの違いを考察することで、ファシリテーションの能力の特徴を明らかにすることである。その結果、ファシリテータに求められる能力は、個人の気づきを集団で共有する能力、予測に対する認識のずれを把握する当面の方針を導く能力、話し合いの中で一部の人の理解を偏らせない能力、関係者の変化に即応した適切な時期に話し合いを設定しフィードバックする能力、治療・ケアの決定後にもアセスメントし、次の空間につなげる能力であった。本結果は、第20回日本感性工学会にて発表した。 上記の結果から、倫理コンサルテーションを行う前の段階での、ファシリテーションのもつコミュニケーションの倫理的価値構造を明らかにすることができた。
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