所有の問題の考察において明らかになったのは、人と人との関係による媒介という事態が、理論哲学が扱う現象の広い範囲に浸透していることであり、本研究の現代哲学の諸問題への関連性を示している。 また、所有を因果性として考察したときに見えてくる論点は、因果言明の反事実条件法的分析に連なる不在因果の問題や、因果概念の言語的・社会的実践への内在の問題とも関り、ここにも、現代哲学の論点との密接な関連が見て取れる。 不正義による危害への注目から浮かび上がるのは、被害によって毀損された社会的関係や被害者の尊厳の回復に焦点を当てる、修復的正義や移行期正義といった応報的・匡正的正義のアプローチとの関連性である。
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