研究課題/領域番号 |
16K02148
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 真 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (30536488)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 福利 / 不幸 / 価値 / 個人的価値 / 感情価 / 福利主義 / 自然主義的実在論 / 理論選択 |
研究実績の概要 |
4月の名古屋大学哲学会大会で「福利の対称性テーゼと正負の個人的価値の理論」という題目で発表した。この発表は、本科研の根本的なテーマである、非相対的な意味における不幸(負の福利、不利益、禍)の主張が意味を成すかどうか、という問いに取り組んでいる。この発表に対してもらったフィードバックを踏まえて、一年後に「正負の個人的価値の理論としての感情価反応依存説(VRD)」という論文を公開した。これらの発表や論文で展開された仮説は、特に福利についての理論というよりは、それを含む個人的価値の理論というべきものになったので、個人的価値一般と福利の区別、そしてそれぞれの概念の規範倫理における役割について検討を進めた。この考察の結果として、論文(「福利主義をのりこえて―個人的価値主義と福利の位置づけ―」(仮))を執筆し、2020年度に予定である。さらに、福利、あるいはより一般的に個人的価値というものが、世界においてどのようなものとして存在し、われわれはどのようににしてそれらを認知するのか、という形而上学的・認識論的な問題についても、4月の応用哲学会大会において発表した。この発表(「個人的価値についての自然主義的実在論」)も、大会で受けたコメントを踏まえて改訂し、2020年度に論文として刊行するつもりである。またこのような、福利を一例とする価値の、世界におけるの位置づけというテーマに関して、どのような基準に基づく理論選択が可能か、というメタな問題意識をもって、「世界の内に価値を求めて―自然主義的価値実在論のプロジェクト―」という発表を行った(於 名古屋大学高等研究院主催 第 5 回 名古屋大学の卓越・先端・次世代研究シンポジウム「挑戦:人文学・社会科学研究の最前線」)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討課題についての検討は学会発表を通じて進展している。その発表について受けた質問やコメントをもとに原稿の改善をはかっているため、最終的な論文が刊行されるのが次年度になったりしてしまっているが、研究自体が遅れているわけではない。
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今後の研究の推進方策 |
現在口頭発表を終えて、フィードバックを受けたうえで改訂を試みている原稿が多いので、それらを今年度中に論文として投稿・公刊することを目指す。さらに福利の比較可能性や個人間比較の問題に関して口頭発表をしたいと考えているが、コロナ禍の影響で遠隔型の発表をすることになるかもしれない。いずれにせよ、本年度が最終年度なので、これまでの研究をまとめ上げて、一冊の書籍として示すことができる形に持っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2~3月期に学会(国際学会を含む)に出張したり、専門家を招いて話してもらって謝金を出したり、研究に使用する物品を購入しようと考えていたが、コロナ禍でこれらの計画が延期や中止になってしまった。本年度はテレワークやオンライン型研究会が推奨されていることもあり、大学に行かなくても研究を遂行できる体制を構築し維持するのに科研費を追加的に使用することになる。
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