2018年度は3年間の研究計画の最終年度であるため、前年度までの活動を継続しつつ研究を進めると共に、その成果を過去2年間の成果と統合し、本研究全体をとりまとめる作業を行なった。「現代フランス現象学に関する日仏共同研究の試み」という本研究課題は、フランスの研究者たちとの共同作業に基づき、多様な仕方で営まれつつある現代フランス現象学の成果を総合的な観点から把握し、それを日本の研究者の側から捉え返して、日仏の研究者間での相互的対話を通してその可能性の開拓と展開を目指すものである。こうした研究目標を達成するために、2018年度はディディエ・フランク(パリ西大学)、ローラン・ヴィルヴィエイユ(パリ・フッサール文庫)、セルヴァンヌ・ジョリヴェ(フランス国立科学研究センター、パリ高等師範学校)、ヴァンサン・ブランシェ(ソルボンヌ大学)らを招聘し、日本の研究者たちを交えて「フランス思想の中のハイデガー」と「ジャック・デリダと現象学」という二つのシンポジウムを開催した。またフレデリック・セレール(デポール大学)を中心とするシンポジウム「現代フランス思想の諸相」を日本ミシェル・アンリ学会と共に開催した。フランスに赴いた際にはピエール・ゲナンシア(ブルゴーニュ大学)やフランソワ=ダヴィッド・セバー(パリ西大学)など本研究と協力関係にある研究者たちとも会合を行ない、各自の研究の進展状況の確認などに関する研究打ち合わせを行なうことで、これまでの連繋から得られた成果を総合することに努めた。その結果、以前からのテーマである「差異」、「真理」、「主体」、「時間」などに加え、「世界」、「物」、「有限性」などの新たなテーマが見出された。このような活動を通じて本研究の全体的成果を取りまとめ、その公刊に向けての準備を進めているところである。
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