研究課題/領域番号 |
16K02158
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
大形 徹 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60152063)
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研究分担者 |
大野 朋子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10420746)
山里 純一 琉球大学, 法文学部, 名誉教授 (50166659)
佐々木 聡 大阪府立大学, 人間社会学部, 研究員 (60704963)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タマシイ / 紐祭り / 辟邪 / ネパール / ヒンズー教 / 発病書 / 沖縄 / まじない |
研究実績の概要 |
017年度は7月26日から30日までネパールの調査をした。ネパールでは毎年、7月あるいは8月にジャナイ・プルニマ祭と呼ばれる祭りが行われる。これは紐祭りとよばれている。ヒンズー教徒が手首あるいは身体に紐を巻く祭りである。2017年は7月28日に行われた。カトマンズ市内で、家庭での祭の作法や使用する植物や道具につい聞き取り調査を行い、市内にあるパシュパティナート寺院、スワヤンブナート寺院にて調査を行った。満月の日に行う。例年、八月であることが多いが、2017年は7月28日であった。お寺の境内には、ヒモを巻く人たちがずらりとならんでおり、次々とヒモを巻いていく。ヒモは右手の手首にまく。大形徹の手首にヒモを巻いてくれたのは少年である。白い上下を着ている。上衣には襟がなく、下はズボンである。縁のない帽子をかぶっているが、そこには臙脂とクリームがかった茶色の大きな縦縞に細かな模様が施されている。ヒンズー教の僧はオレンジ色の僧服を着ているが、それとは異なっている。少年の前にはいくつか皿や椀がおかれている。中央にはアルミのような皿がおかれている。皿は四つに区分けされており、そこには赤や黄色の顔料が入っている。 これに関しては、「大形徹・山里純一・佐々木聡・大野朋子「石垣島・タイ北部・ネパール・中国等の人々の手首にヒモを巻くことについての考察」を著した。『形の文化研究』2018年3月に投稿、2018年4月現在、査読後修正中である。佐々木聡「近世社会における発病書の受容と展開―元刊『陰陽備用選択成書』疾病門を起点として―」第69回 日本中国学会、山形大学、2017.10.7、佐々木聡「清末刊『張天師法病書』と近世における三十.病占の展開」人文学論集36、2018.3.1-22、山里純一「琉球・沖縄の暮らしの中のまじない」(沖縄市立図書館、2018.3.4)が直接、関連する主な業績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
石垣島・沖縄、タイのチェンマイ周辺の調査にくわえて、ネパールのヒンズー教の調査を行うことができた。例年8月にジャナイ・プルニマ祭と呼ばれる大がかりな祭りが行われ、これは紐祭りとよばれている。ヒンズー教徒が手首あるいは身体に斜めに紐を巻く祭りである。2017年は7月28日に行われた。カトマンズ市内の寺院で行われたものに参加し、大形が自ら紐を巻いてもらった。タマシイが体外へ逃げ出さないようにということを企図しているように思われる。紐を巻くことは、中国では民間信仰や道教、石垣島では民間信仰、タイのチェンマイでも、土俗的な民間信仰とかかわっていた。それぞれ宗教は異なっているが、その基層には、体内にはタマシイがあり、それが抜け出て戻ってこないことは良くないことであるという考え方があり、それをふせぐためのわかりやすい方法が、手首や身体に紐を巻き、出て行こうとするタマシイをつなぎとめようとするのではないかと思われる。 ほかに『千金翼方』禁経の悪霊をふせぐための呪文の文章も、少しずつ読み進めている。これは奈良の長屋王の邸宅迹から出た呪符木簡に類似の文章である。あと『医心方』にも類似の文章があるため、それらとあわせて考察していく。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、それぞれに辟邪の観点から研究発表を企画している。大形徹は「悪霊を避ける」、山里純一は「石敢当」、佐々木聡は「白澤」、大野朋子は「ダレオ(鬼の目)」、水野杏紀(研究協力者として参加予定)は「風水」に関して、それぞれ「辟邪、魔除け」といった観点から話をする。その内容は、まとめて、『中国の辟邪文化』という書籍として刊行したいと考えている。 それとは別に現在、読み進めている『千金翼方』および後世の医学文献にみえる辟邪記事に関して整理をくわえるという作業を完結させ、大阪府立大学の『人文学論集』に投稿したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度はi-siteなんばで辟邪に関する講演会をひらく予定であり、そのための費用をある程度確保する必要があるため、次年度使用額が生じた。
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