本研究調査により、基の『妙法蓮華経玄賛』のチベット語訳にあたる『妙法蓮華註』をその漢文と対照し、校訂テキストを作成し、和訳を完成した。この基礎資料に基づいてチベット語訳の特徴を分析したところ、両者の相違点の多くは、両者が依拠した『法華経』の原典の相違に由来することが明らかになった。また、チベット語訳とヴァスバンドゥの『法華論』の関係を解明し、チベット語訳者は『法華論』を認識した上でその引用を省略せずに翻訳していることが明らかになった。さらに、内陸アジアの諸言語に翻訳された『法華経』とその関連文献を調査分析することにより、これらの地域における『法華経』の伝播状況が明らかになった。
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