本課題に関する今年度の研究実績については、これまでの台湾における現地訪問調査を継続した。まず、台北教区の天主堂を網羅的に調査し、続いて新竹教区の天主堂も9割は調査を完了した。同時に桃園地区の天主堂への訪問と信者の方への聞き取り調査を開始している。これらについては、現在、調査結果の取りまとめ中である。 これらのような網羅的調査の推進によって「台湾全体」の特性を把握することができ、これらは「東アジア地域」の相互比較との材料となる。また、一方で台湾各地域の相互比較のために、それぞれの地域(教区)の特性を把握する作業(観点)も必要であるため、これらを意識しながら、現地調査と聞き取りを行っている。台湾での滞在時間が限られているため、「地域網羅的」調査と並行して、各教区の主教座や特徴的な天主堂を事前調査でピックアップした上での、訪問調査も行っている。 また、台湾訪問に合わせて、7月に台北で開催された国際学会「西學與明清之際的文化變遷系列工作坊(一)」に参加し、本課題に関係する「中国におけるイエズス会宣教師の活動」などを研究テーマとする国際的な研究者ネットワーク(EUCHINA)に加入でき、現在活発な情報交換を行うことも可能になっている。 このほか、9月に中国上海で開催された国際学会「中国哲学的豊富性再現―荒木見悟与中日儒学国際研討会」にも参加し、中国における天主教研究者との知見交換を行うことができた。 これ以外にもマテオ・リッチがヨーロッパに送った書簡の翻訳作業を継続しているが、今年度は本務校の役職(副校長)での業務が膨大になったため、成果発表としての取りまとめが年度内には間に合わなかった。
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