本研究は、スリランカの上座部大寺派が伝承したパーリ仏典に基づいてスリランカ仏教史を構築する方法論的問題の解決を目指し、スリランカに関連する漢訳仏典を活用して、立体的なスリランカ仏教史の再構築を目指した。その研究成果として、古代インドには存在しなかった史書がスリランカに成立した歴史的経緯を明らかにすることができた。漢語資料とパーリ文献との比較調査の過程で、『島史』の構造を解明することに成功し、仏教の中心地であるインド本土に対し周縁にあったスリランカにおいて、大寺が自らを仏教世界の中心に位置づけるために年代記の形式がスリランカに生まれる経緯を論じた。
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