本年度は聖徳太子像を所蔵する寺院・博物館・美術館への調査を積極的に行った。 研究代表者は研究分担者の松尾剛次とともに4月に埼玉県行田市、5月に石川県の寺院の聖徳太子孝養像・南無太子像の調査を行った。研究代表者は8月に愛知県三河地方、9月、10月に大阪府・奈良県の寺院、12月に福井県嶺北地方の寺院を訪れ、初期浄土真宗および聖徳太子関連寺院における聖徳太子像などを確認した。また12月に修復中・被災により従来と異なる安置をしている京都の浄土真宗本山を訪れ、現在の聖徳太子像の安置様式を確認した。また関連して石川県立歴史博物館・奈良国立博物館・泉屋博古館・四天王寺宝物館等の展示を観覧し、福井県立美術館での聞き取りを行い、資料の収集につとめた。また研究代表者の所属大学には所蔵されない図録を取り寄せ閲覧した。 以上の調査と資料の収集を交互に行うことを基礎として、初期浄土真宗における聖徳太子像の受容・光明本の成立について、浄土真宗外の資料をも考察した先行研究を確認しながら、近年見落とされている点や厨子との深い関連を確認することができた。また研究論文の収集により江戸時代における親鸞書簡の受容状況をふまえると研究代表者の仮説を補完する知見を得ることができた。 その他に研究代表者は中国・北京大学、台湾・台湾大学(佛光大学との共催の国際学会)において本研究に関連する基礎的研究発表を行った。 研究分担者の松尾剛次は本研究成果の一部として『鎌倉新仏教論と叡尊教団』(法蔵館)を2019年3月に出版した。
|