研究課題/領域番号 |
16K02171
|
研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
倉西 憲一 大正大学, 仏教学部, 非常勤講師 (90573709)
|
研究分担者 |
SHAKYA Sudan 種智院大学, 人文学部, 准教授(移行) (60447117)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ネパール写本 / Pasupatinath / Tantrasadbhava / Siksasamuccaya / Mahacakravajri |
研究実績の概要 |
当該科研初年度の目的の一つである諸写本(研究対象)のデータ採取はおおむね順調に進んでいる。ネパール写本は、その多くがデジタルデータ化されている。それら入手しやすいデジタルデータを、まずは入手し、当該科研の主たるテーマである「写本に見る文化的側面」を窺い知ることのできる写本を弁別する作業をおこなっている。その際には、できるだけ、詳細な写本の情報(大きさ・字体・行数・一枚あたりの文字数・割註・余白註・奥書)を採取している。 デジタルデータ化されていない写本は、現地へ赴いて、できる限りデジタル化し入手する。これは写本の現在の状態をデジタル化することをも目的とし、それらデータは将来の写本研究に大いに寄与するものである。現在、ネパールは近年の地震によって、いまだ復興が思うように行っていないこともあり、こうした小さな努力が必要である。今年度の具体的な成果としては、以下三点挙げられる。 (1)ネパールのパシュパティナート寺院において、11世紀頃に書写されたシヴァ派のテクスト、『タントラサッドバーヴァ』の写本にまつわるその書写時期の事情について、当該科研の研究協力者である房貞蘭氏および代表者が研究題材とした。写本の詳細をデジタルデータ化し、さらにはその同時期、同場所において書写された写本を二点見つけ出し、それらの関係性について研究した。 (2)現在の日本の仏教において頻繁に唱えられている『大金剛輪陀羅尼』について、『シクシャーサムッチャヤ』の現存するネパール写本をもとに、その陀羅尼のサンスクリット原文を模索した。少なくとも、『シクシャーサムッチャヤ』の著された時期に、仏教僧院において唱えられていたであろう形を論文において発表した。 (3)研究分担者のスダンシャキャ氏はネパールの写本文化について概要的な論文を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該科研が主たる研究対象とするのは、ネパール・サンスクリット写本であるが、大規模な地震の後、ネパール国立公文書館など写本を保管している施設において、以前のように、簡単に写本資料に接することができなくなっており、当初予定していた資料蒐集に少し遅れが生じている。ただし、インターネット上に多くのネパール写本データベースがあり、そこに掲載されている写本データを中心に作業を進めているので、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
当該科研2年目は、現地(ネパール)へ赴き、できるだけ多くの写本を蒐集し、資料保管状況などを調査する。さらに、ネパール写本が収蔵されているネパール以外の国にも赴き、蒐集することが必要となる。中でも、イギリス・ケンブリッジ大学所蔵の写本を入手する。このケンブリッジ大学所蔵写本は、その入手経緯に興味深いことがあり、これについては、研究分担者のスダンシャキャ氏によって、研究発表が予定されている。そして、研究協力者の房貞蘭氏は現在ハンブルグ大学におり、同大学が保管しているネパール写本デジタルデータ(NGMPP)の入手に努めてもらう。 一年目に採取した写本データをもとに当該科研の主たる目的である「写本に見る文化的側面」について考察することが必要になる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計画していたネパール調査出張が、出張先としていたネパール国立公文書館との事前交渉がスムーズに行かず、二年目に出張することを決めたため。なお、初年度の残額は出張には十分ではないが、二年目の予算と合わせて計上する予定。
|
次年度使用額の使用計画 |
初年度に計画していたネパール出張に使用する。特に、ネパール国立公文書館、ケーサル図書館を中心に、仏教が今も息づいているネパール・カトマンズ郊外のパタン市に赴き、個人所有の写本など捜索する。研究分担者のスダンシャキャ氏とともに出張する予定である。
|