研究課題/領域番号 |
16K02172
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
平林 二郎 大正大学, 綜合仏教研究所, 研究員 (30724421)
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研究分担者 |
辛嶋 静志 創価大学, 付置研究所, 教授 (80221894)
長島 潤道 大正大学, 仏教学部, 専任講師 (40646220)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 仏教学 / 古文書学 / サンスクリット写本 / 中央アジア / ギルギット / ブラーフミー系文字 / 書体 |
研究実績の概要 |
本研究は,大英図書館,ロシア科学アカデミー,インド国立公文書館が収蔵しているブラーフミー系文字によって書写されたサンスクリット仏教写本を調査し,解読・比定をおこない,それらを公開することを目的としている. 大英図書館が収蔵している写本については,ヘルンレ・コレクションの一部(Or. 15011),ならびに,陀羅尼経典写本(Or. 6403)を中心に研究を進めた.まずヘルンレ・コレクションについては,ヘルンレ自身が先行研究をManuscript remains of Buddhist Literature found in Eastern Turkestan (1916)に発表しているが,その解読内容には誤りが散見されることがわかり,現在その修正を試みている.次に陀羅尼経典写本については,研究会を開催し,その写本の大半を解読した. また,この陀羅尼経典写本にはロシア科学アカデミーにパラレルとなる写本(SI 2036)が存在していることがわかり,ロシア科学アカデミー東洋学研究所の協力の下,その写本の研究に着手した. インド国立公文書館が収蔵している全ギルギット写本については,インド国立公文書館と国際仏教学高等研究所が共同でカラー影印版を出版しつつある.本研究の一環として,研究代表者がこのプロジェクトに参加し,『アジタセーナ・ヴィヤーカラナ』のギルギット写本の出版(Further Mahayanasutras: Gilgit Manuscripts in the National Archives of India Facsimile Edition, Volume II.4)に携わった. この他,以前に出版したThe British Library Sanskrit Fragments, Vol. I-III,ならびに,The St. Petersburg Sanskrit Fragments, Vol. Iを含め,ブラーフミー系文字の書体を研究するために,それらで使用されている文字の文字表作製に着手しはじめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,大英図書館に収蔵されているヘルンレ・コレクションの一部(Or. 15011),ならびに,陀羅尼経典写本(Or. 6403)の解読に取り組んだ.その成果として,両写本を合わせ30葉程度の解読が終了した. 次に,ロシア科学アカデミーに収蔵されている写本については,大英図書館の陀羅尼経典写本のパラレルとなる写本(SI 2036)の研究に着手し,その内容のローマ字化をほぼ完了させた. インド国立公文書館に収蔵されている写本については,研究代表者が研究を進めている『アジタセーナ・ヴィヤーカラナ』のギルギット写本の出版に携わった.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度,大英図書館に収蔵されている写本については,ヘルンレ・コレクションの一部(Or. 15011),ならびに,陀羅尼経典写本(Or. 6403)の内容を研究するとともに,それらの写本の画像をデジタル的に整理したいと考えている.このデジタル整理とは,四散している写本の断片や,写本の折れている部分などをPCの画面上でデジタル的に組み合わせ,もとの形に復元するものである. ロシア科学アカデミーに収蔵されている写本については,現在入手している写本の画像ファイルだけでは文字が不鮮明なものがある.このような写本については解像度の高い写真を撮影しなおし解読を進める必要がある.そこで平成29年度中にロシア科学アカデミーを訪問し,写本の調査・撮影をおこなうとともに,ロシア科学アカデミー東洋学研究所研究員のサファラリ・シャマフマドーフ博士と研究会を開催する計画を立てている. インド国立公文書館に収蔵されている写本については,Gilgit Manuscripts in the National Archives of India Facsimile Editionで出版した『アジタセーナ・ヴィヤーカラナ』などの写本の文字表作製に取り掛かっている.この文字表を作製・出版することで,他の研究者もギルギット写本にアクセスすることが容易となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究開始当初は,一次資料のデータ化や,テキストの打ち込みなどを研究協力者の学生に依頼する計画であったが,人員が確保できず,研究代表者と分担者で最低限必要となる作業をおこなった.そのため,人件費・謝金を執行することができなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,テキストの打ち込みや,データの整理などをおこなってくれる人員を確保したため,繰越した基金の一部はその研究協力者の学生への支払いに充てたい.また,それ以外の余剰分については,本研究に関連する図書の購入に充てる.
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