研究課題/領域番号 |
16K02173
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研究機関 | 公益財団法人中村元東方研究所 |
研究代表者 |
平野 克典 公益財団法人中村元東方研究所, その他部局等, 専任研究員 (70513737)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヴァイシェーシカ / 結合関係 / 分離 / 内属関係 / パダールタ・ダルマ・サングラハ / ヴィヨーマヴァティー / ニヤーヤ・カンダリー / 存在論 |
研究実績の概要 |
本研究の全体構想は、ヴァイシェーシカ学派の存在論を再評価することにある。従来、同学派の存在論は<関係項>(結び付いたもの)に着目され考察されてきた。本研究では<関係>(結び付けるもの)に着目し、同学派の存在論の新側面を明らかにすることを目指している。同学派は内属関係と結合関係の2種類の<関係>を説く。そのうち、30年度は<結合関係>の重層的な理解をめざした。その際、<結合関係>の対概念である<分離>から<結合関係>の概念理解を試みた。いわば裏側からの<結合>理解である。具体的な研究成果は以下の通りである。 (1)29年度の研究成果に挙げた、プラシャスタパーダ作『パダールタ・ダルマ・サングラハ』中の「結合関係の章」の和訳がある。同書の<分離>の概念を考慮した上で、同和訳に詳細な解説を加筆した。 (2)2018年7月にカナダ、ヴァンクーヴァーのブリティッシュコロンビア大学で開催された、第17回世界サンスクリット学会において、“A Re-examination of the Definition of Universal in the Nyaya-Vasesika” (「ヴァイシェーシカ学派の『普遍の定義』の再検討」)と題する研究発表を行った。同発表では、しばしその論理的欠陥が指摘されている「普遍の定義」を主題としつつ、普遍と個物が内属関係で結ばれていることを踏まえ、普遍と個物のあり方から内属関係の特質を明らかにすることができた。 (3)『パダールタ・ダルマ・サングラハ』の注釈書であるシュリーダラの『ニヤーヤ・カンダリー』の「結合関係の章」と、同じく注釈書である『ヴィヨーマヴァティー』の同章との思想上の比較検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラシャスタパーダ作『パダールタ・ダルマ・サングラハ』中の「結合関係の章」の和訳の公開には至っていない遅れはあるが、同書の注釈書間の結合関係と分離に関する考察は当初の予定通りに順調に進展しているので。
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今後の研究の推進方策 |
(1)プラシャスタパーダ作『パダールタ・ダルマ・サングラハ』中の「結合関係の章」の和訳・訳注を公開する。 (2)『パダールタ・ダルマ・サングラハ』の注釈書であるウダヤナ作『キラナーヴァリー』の「結合関係の章」及び「分離の章」を読み解く。 (3)『パダールタ・ダルマ・サングラハ』の諸注釈書間の<結合>を巡る思想上の変遷を考察する。 (4)結合関係と内属関係に対するこれまでの研究成果を統合し、<関係>概念から同学派の存在論の特徴を明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた海外調査を実施できなかったため。 使用計画としては、今年度の夏期に海外渡航を予定している。
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