研究課題/領域番号 |
16K02182
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
田中 悟 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (90526055)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 現代韓国 / 葬墓文化 / 死者 / 顕彰 / 慰霊 / ナショナリズム |
研究実績の概要 |
本研究は、戦死軍人・殉職公務員にとどまらず、独立運動家・民主化運動家・社会貢献者など、多種多様な経歴を持つ人々を取り込み、今もなおダイナミックな変容を見せている現代韓国の「公的な死者顕彰・慰霊システム」に注目し、宗教学的かつ政治学的な分析を加えることを目指すものである。具体的研究項目は、(1) フィールドワークを通じ、公的な死者顕彰・慰霊の変容とその実態について明らかにする、(2) そうした変容にともなって生じる社会的なコンフリクトの動向分析を行なう、(3) 現代韓国社会における「公的な死者の顕彰・慰霊」をめぐる議論が蔵する含意についての読み解きを進める、の3点に集約される。 まず、資料収集・フィールドワークについては、2019年8-9月にソウル特別市の他、忠清北道清州市・仁川広域市・大田広域市・京畿道高陽市・世宗特別自治市といった各地域において、現代韓国における葬墓文化および韓国ナショナリズムに関連する施設の視察および調査を実施した。また、同年12月から翌2020年1月にかけては、釜山広域市および大邱広域市・慶尚南北道各所を訪問し、葬墓文化関連施設の現地調査を行なった。なお、上記調査は、前年度から継続する定点観察を含むものである。 これらの調査に基づく研究成果の一部は、藤田大誠〔編〕『国家神道と国体論―宗教とナショナリズムの学際的研究』(弘文堂、2019年)所収の田中悟「国立墓地群を通して見る韓国ネイション内部の「亀裂」について」(353-369頁)において公表した。また、さらなる研究成果が年度内にも公刊される予定であったが、新型コロナウイルスの影響で間に合わず、延期となっている。これについては次年度に公刊することを予定しており、また新たな考察に基づく研究成果についても追加で公表すべく準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から予定されていたフィールドワークおよび資料収集については、全体として順調に進められている。また、公刊図書による研究成果の公表も実現している。これに続く研究成果については、出版側の事情で年度内の公刊には間に合わせることができなかったが、次年度以降に公刊予定である。 以上の理由から、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と評価するのが妥当であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の対象である現代韓国の「公的な死者の顕彰・慰霊システム」は、現在進行形で形成されているダイナミックな事象であるため、継続的なフィールドワークおよび資料・情報の収集は必須である。しかし現在、新型コロナウイルスの影響で、韓国における現地調査は実施が極めて困難な情勢である。 そのため今後は、日本国内でも可能な情報収集活動、およびこれまでの調査を基にした考察を取りまとめ、研究成果として公表することに力点を置いた活動を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
①次年度使用額が生じた理由:年度終盤に発生した新型コロナウイルス禍の影響で、予定されていた現地調査および研究交流に支障が発生し、一部が中止および延期となったため。 ②使用計画:次年度についても、調査対象である韓国との間では先行き不透明な情勢が続いており、延期されている一部の現地調査については取りやめを余儀なくされる可能性がある。その場合は、日本国内における研究活動に集中するものとし、国内において可能な情報資料収集と研究成果発表に専念する予定である。
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