本研究は、戦死軍人・殉職公務員にとどまらず、独立運動家・民主化運動家・社会貢献者など、多種多様な経歴を持つ人々を取り込み、今もなおダイナミックな変容を見せている現代韓国の「公的な死者顕彰・慰霊システム」に注目し、宗教学的かつ政治学的な分析を加えることを目指すものである。具体的研究項目は、(1) フィールドワークを通じ、公的な死者顕彰・慰霊の変容とその実態について明らかにする、(2) そうした変容にともなって生じる社会的なコンフリクトの動向分析を行なう、(3) 現代韓国社会における「公的な死者の顕彰・慰霊」をめぐる議論が蔵する含意についての読み解きを進める、の3点に集約される。 まず、本年度のフィールドワークおよび資料調査(2020年度から延期を重ねてきたものであり、2022年度夏期および冬期に韓国で実施する予定であった)については、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による出入国制限が継続したため、さらに計画変更を余儀なくされたが、2022年12月~2023年1月と2023年3月の2度にわたって渡韓を敢行し、現地調査と資料収集を実施することができた。 また、昨年度の研究報告(日本宗教学会)を経て、投稿予定の雑誌の休刊を受けて刊行が遅れていた論文は、2023年2月に刊行された(『摂南国際研究』創刊号、2023年)。その他、本研究成果の一部は、隣接分野の研究書の書評論文の形で公表されている(『戦争社会学研究』第6号、2022年、および『宗教と社会』第29号、2023年刊行予定)。
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