研究課題/領域番号 |
16K02183
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
安藤 泰至 鳥取大学, 医学部, 准教授 (70283992)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生命倫理 / 障害 / 宗教 / スピリチュアリティ / 生命操作 |
研究実績の概要 |
9月に行われた宗教哲学会(オンライン開催)において、「糸賀一雄の福祉思想における宗教性―実践のなかで鍛えられる宗教哲学―」という研究発表を行い、刺激的な議論を行うことができた。糸賀一雄は本研究のなかの文献研究の核となる思想家であり、キリスト教信仰と宗教哲学の学識をベースに、障害児教育や障害者福祉についての独自の思想を展開したことについて、彼の福祉思想における宗教性というものがどのようなものであったのかを明らかにした画期的な内容であると評価された。(同発表内容は、本年度、同学会の学会誌に投稿予定)。 また、同じく9月に行われた日本宗教学会(オンライン開催)では、「宗教が生命倫理を語るとき―S.ハワーワスの思想を手がかりに―」という研究発表を行った。ハワーワスも独自のキリスト教神学の立場から障害や障害者の問題に鋭く切り込んだ思想家であるとともに、生命倫理についても積極的な発言を行った。同発表では、ハワーワスが宗教的な立場から生命倫理や障害の問題について発言しつつも、それが同じ宗教的信仰を共有しないものにも開かれた仕方でなされていることに着目したものである。 また、7月に報道された京都のALS女性嘱託殺人事件について、多くのマスメディアからコメントやインタビューを求められたが、その過程で雑誌やウェブサイトに掲載されたものは本研究ともかなりつながりのある内容で、障害学や障害者運動に携わる研究者や運動家たちとの交流・議論をさらに進めるきっかけとなったことで、本研究にプラスになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
引き続きコロナ禍のため、予定したインタビュー(出張)ができず、海外研究者の招聘もかなわなかったため、さらに1年間の期間延長を申請し、認められた。
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今後の研究の推進方策 |
海外研究者の招聘は今年度も困難なので断念するほかないが、インタビューについては、直接に対面で行えない場合は、Zoom等のオンラインで行いたい。 これまでのインタビューのテープ起こしはほぼ終わっているので、インタビュー対象者にファイルを送って修正を求め、報告書に掲載するテキストを確定させたい。 糸賀一雄研究については、学会誌『宗教哲学研究』に投稿する。 ハワーワス研究については、未邦訳のいくつかの重要論文(本研究と特につながりの深いもの)を翻訳し、報告書に掲載する予定にしている。 さらに本研究の内容と関係の深い単著『生命操作時代における死生学」を今秋にKADOKAWAより刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、予定していたインタビュー調査のための出張もできず、学会、研究会もすべて中止ないしオンライン開催となったため出張がなく、旅費として予定していた分のほぼ全額が使用できなかったため。 本年も旅費支出は多くないと予想されるが、その分は研究を深めるための書籍の購入に使用したい。
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