現代および将来における日本の学校教育において、神話、伝説、昔話といった伝統的言語文化をどのように教えていくべきかという問題の方向性を探るための予備調査を行った。二十一世紀に生きていく若い世代の教育では国際化のための英語教育やこれまでにない技術習得のための理科系教育が極めて重要なことは論を俟たないが、我が国の伝統的文化の継承が絶たれてしまうなら、元も子もない。そこで本研究では、研究代表者が神話学の立場、そして研究分担者が教育学の立場という二つの異なる立場から、神話、伝説、昔話といった我が国の伝統的言語文化を教育を通じていかに後世に伝えていくかを探った。方法としては、代表者が理論をそして分担者が実践をという二つの方向性を保持しつつ、実際の小学校国語の授業の場においてその効果を測定することを行った。 同時にまた現代日本におけるこうした伝統的言語文化研究の在り方の国際的および歴史的位置づけを確認するために、代表者と分担者別個にあるいは共同で他国での状況を調査したり、国際学会や国際研究集会に参加して、海外に向けた発信を行った。 こうした研究成果は研究成果報告書としてまとめ、関係機関に配布した。また国際学会での発表は一部まだ活字化されていないが、今後される予定である。 海外の研究者にも利用できるような英語での資料のまとめとその解釈については歴史的な状況の説明も含み、当初計画していたプランがほぼ実現できたと思われる。しかし反省点も残った。それはせっかく両名で蒐集した多くの日本および海外の関連文献を体系化して利用しやすい形で公開するというもう一つのプランについては、研究期間内には実現できなかったことである。こちらについては実現にさらに努力していきたい。
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