研究課題/領域番号 |
16K02189
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐々 充昭 立命館大学, 文学部, 教授 (50411137)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宗教連合運動 / 大本教 / 道院・紅卍字会 / 甑山教 / 普天教 / 檀君教 / 大イ宗教 / 玄洋社 |
研究実績の概要 |
今年度は大本教と道院・紅卍字会との連合運動に関して、戦前期に書かれた資料の収集と分析を行った。具体的に言うと、第一に出口王仁三郎を中心とする大本教の教団資料、第二に大本教の外郭団体(人類愛善会や昭和神聖会など)の資料、第三に内田良平及び黒龍会関連の資料、第四に戦前期の満洲国で刊行された資料の収集を行った。特に今年度の調査で『東瀛イ布道日記』(道院側が大本教を訪問した際に開壇された扶占L<フーチ>の内容が収録されている)を入手し、現在その解読と分析を進めている。 その他、過年度に行った研究成果を韓国語に翻訳して共著として韓国で出版した。一つは、檀君教(大イ宗教)が唱導した民族主義言説が植民地期朝鮮の宗教研究に及ぼした影響について論じたものである(『韓国社会と宗教学』ソウル大学校出版文化院)。もう一つは、朝鮮の民族独立運動家である趙素昴が諸宗教を統合するために構想した六聖教について論じた論文と、戦前の満洲国で唱導された大アジア主義思想と中国の大同思想との関連について論じた論文を掲載したものである(『東アジアの大同思想と平和共同体』韓国学中央研究院出版部)。 また、抗日独立運動家である羅喆が旧韓末期に行った訪日活動に関する研究を行い、学術誌に論文として発表した。この論文を通じて、1905年に天道教を宣布した孫秉煕(東学の第三代教主)と1909年に檀君教を創設した羅喆が、旧韓末期に日本に亡命した親日開化派官僚たちを交えて交流を行っていた事実や、甲申政変の失敗後日本に亡命した金玉均を通じて、頭山満や玄洋社系の大陸浪人たちが朝鮮半島問題に深く関与するようになった経緯について明らかにした。これらの事実は、大本教-道院・紅卍字会の連合運動に合流していった朝鮮の新宗教教団の中に、檀君教系や旧東学系(特に一進会・侍天教)が含まれていたことを論じる際に重要な論点となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、昨年度に引き続き、研究代表者の体調不良によって海外でのフィールド調査を行うことができなかった。そのために、当初の研究計画を変更し、日本国内において資料収集と論文執筆を中心に研究を進めた。 資料収集に関して言うと、大本教と道院・紅卍字会との連合運動に関して、戦前期に日本語で書かれた資料に関してはほぼ収集を終えた。今年度は、新たに発掘した『東瀛イ布道日記』などの資料を通じて、大本教と道院・紅卍字会との連合運動に関して、黒龍会を主管した内田良平が、両団体の提携に積極的な協賛を行った事実について考察を深めた。 また、1920年代から30年代にかけて朝鮮の新宗教団体が大本教-道院・紅卍字会の連合運動に合流していった端緒が、すでに韓国併合以前の旧韓末期において、玄洋社の頭山満や著名な大陸浪人たちの興亜主義運動にあることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、日本国内における資料収集を中心に行ったために、海外での現地調査と資料収集を行うことができなかった。今後は、当初計画していた研究を後にずらして行い、最終年度に全体の調整を行うこととする。 具体的には、平成30年度に普天教、および朝鮮の京城において1935年に創設された朝鮮道院に関する調査を韓国で行う。そして、平成31年度に道院・紅卍字会に関する調査を中国と台湾で行う。 今年度の資料調査によって、宗教連合運動の基軸となった大本教と道院・紅卍字会との関係についてその概要を解明することができた。特に来年度は、朝鮮側新宗教教団の中で最大規模であった普天教との提携関係、および京城道院の概要について研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初の計画では海外において現地調査を行う予定であったが、これを中止したために、結果として旅費および現地での協力者に対する謝礼金などに差額が生じた。 (使用計画) 次年度以降において、当初予定していた現地調査や資料調査を行っていく。平成30年度には韓国、平成31年度は中国と台湾で調査を行う。その際、今年度予定していた購入できなかった文献調査のための資料(中国語と韓国語を含む)を購入する。
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