スペインの事例を比較検討することを目的に、イギリス(2019年8月1日から14日)と日本(2019年11月23日)で調査を行なった。文献調査によれば、イギリスのブラジル人人口は12万人で、スペイン(8.6万人、2016年)を上回る。ブラジル人移民の流れは1990年代に始まっており、スペインより10年ほど早い。調査では、コングレガシオン教会(ロンドン市内1箇所、オックスフォード市内1箇所、スウィンドン市内1箇所)、カトリック教会(ロンドン市内3箇所)、プロテスタント教会(ロンドン市内1箇所)を訪問して活動状況を視察した。 イギリス全土にコングレガシオン教会は9箇所あり、すべての拠点が公民館を借用している。集会は1998年から行われるようになっているがスペインほど活発ではなく組織化も進んでいない。一方、ロンドン市内にはポルトガル語のミサを開く6つのカトリック教会がある。2004年に活動を開始したブラジル人教区としてウエストミンスター教区で承認されている。ブラジルから派遣された3名の神父が在住し、16の司牧グループによる組織化された活動がみられる。スペインのカトリック教会と比較すると、はるかに活動の規模は大きい。また現地調査で2013年にブラジル系プロテスタント教会(カテドラル・インターナショナル教会)がイギリスに生まれ、活動していることが分かった。この教会は他のヨーロッパ諸国や日本に下部教会を設け、それらを経済的に支援するなどトランスナショナルな展開がみられる。 ほかに、イギリスを中心とする欧州地域における移民・難民と宗教の関係性についての文献資料の整理・分析を進めた。また、本研究の申請時には予定していなかった在日ブラジル人の宗教と幸福度に関する準備調査を行った(2020年1月25・26日、2月2・9日)。
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