本研究では、寛政期以降の海外学術蒐集の中心であった江戸林家の家塾や昌平坂学問所の儒者を取り上げて、彼らの儒礼における父祖に対する家祭と孔子崇拝の釈奠をめぐる思想と実践を関連づけて分析した。その際、古代日本の「古礼」と中国宋代の「程朱学」における儀礼への回帰にとどまらない要素に着目し、それらが必ずしも明代・清代学術受容に起因するものではないこと、むしろ日本近世期の儀礼において神霊が憑依する対象とその変化や武家霊廟にみられる人神祭祀との関連を重視して、儀礼モデルを設定し実施する際の選択の枠組みを提示しようとした。
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