研究課題/領域番号 |
16K02202
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
横田 理博 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (10251703)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 鈴木大拙 / 『大乗仏教概論』 / 『日本的霊性』 / マックス・ウェーバー / 比較宗教社会学 / 『ヒンドゥー教と仏教』 |
研究実績の概要 |
この科研費の研究テーマの中心は、アメリカ遊学期の若い頃の鈴木大拙の思想、とりわけ『大乗仏教概論』(1907年)であるが、この時期の思想を把握するためにも、鈴木大拙という思想家の生涯にわたる思想展開を辿っておくことが不可決であると考えた。そこで、まず、鈴木の主著と見做されることも多い『日本的霊性』(1944年)を考察対象として、そこに表現された思想を探った。具体的には、①『日本的霊性』というテキストの全体像を明らかにした。②鈴木特有の概念である「霊性」や「大地」というキーワードの意味を探究した。③「即非の論理」について、その出典とされる『金剛般若経』と照らし合わせて検討した。④西田幾多郎が本書に触発されて書いた『場所的論理と宗教的世界観』(1945年)との対応関係について考察した。⑤戦後に出版された霊性論――『霊性的日本の建設』(1946年)と『日本の霊性化』(1947年)――を踏まえ、『日本的霊性』の霊性論を相対化して捉え直した。 そのほか、『新宗教論』(1896年)、『仏教の大意』(1947年)、『神秘主義』(1957年)、コロンビア大学での講義録(1952, 1953年)などを読み、鈴木思想の変遷と、生涯一貫するテーマとを探った。鎌倉の松ヶ岡文庫を何度か訪問し、残された資料(蔵書や書簡など)を調査した。鈴木が英文で書いた書簡の翻訳作業にも携わった。 マックス・ウェーバーに関しては、宗教社会学との接点を意識しつつ『法社会学』について考察し、その全体像を明らかにした。また、学生に倫理意識についてのアンケートに回答してもらい、その集計・分析をすることで、現代日本人のエートスの一端の解明を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転勤のため、三月は研究に割く時間の余裕がなかったが、この一年の間に、少なくとも鈴木大拙の『日本的霊性』に関しては、精読し、読み解くことができた。“知と愛との相即性”という論点など、鈴木大拙の生涯に一貫する立場についても理解を深めた。
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今後の研究の推進方策 |
鈴木大拙という多面的な思想家の総体の把握にアプローチしてみたが、今後は論点をしぼって研究成果をまとめ、口頭発表・論文発表という形で発信したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
転勤となったため、英語論文を完成させることができず、そのチェックを依頼することもできなかった。また、資料調査についても予期していたほどの時間を取れなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度中に英語論文を完成させる。資料調査についても十分な時間を取りたい。
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