本研究では当初の計画に基づき、研究主題のⅠ「現代科学史と現代哲学史の接点・起点としてのフランス・エピステモロジー」と、Ⅱ「哲学的「主体性」の動揺と同概念の再検討」に関わる資料収集と分析を行ない、これを基盤としながらⅢ「カンギレム「生命の哲学」の全体像再構築」・Ⅳ「カンギレム哲学のラディカリズムとその反響」に関わる研究活動を進めた。2018年度は、国内外の研究協力体制を活かした研究活動をさらに展開することに努めつつ、研究成果の公表に特に力を注いだ。5月にはカンギレムのエピステモロジー研究とその次世代への影響に関わる研究報告を3件行ない、哲学・科学史を中心とする多分野の研究者からの批正を得た。また7月には英国リバプールで開催されるSociety for Social History of Medicineの年次大会にてツヴィゲンバーグ氏、リバプール大のアヤ・ホメイ氏らとともに現代科学研究と東アジア社会での受容史との関係についての研究報告を行ない、現代科学史・生活史・社会史の交錯に関わる議論を深めた。さらに前年度に開催した国際ワークショップ(2017年に医学史研究者3名とともに開催)の成果を公表するため、共同研究者との連携によって論文執筆を進めた。これは京都大学人文科学研究所の欧文雑誌Zinbunにおいて、小特集として受理された。同様に、20世紀の科学史的転換と現代哲学の諸主題との相互影響を考察する研究プロジェクトについても、哲学者ジョルジュ・カンギレムの科学認識論と19世紀の認識論の転換の関係を論じた論文が日本科学史学会『科学史研究』288号に掲載された。また、科学認識論と現代哲学との関係を論じた論文によって、1968年5月のパリ・5月革命を考察する論集に参加した。本研究の総合的な報告となる医学史と哲学史の交錯に関わる書籍を現在執筆中であり、これは2019年度以降刊行する。
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