研究課題/領域番号 |
16K02212
|
研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
安酸 敏眞 北海学園大学, 学長 (40183115)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | キリスト教学 / シュライアマハー / トレルチ / 波多野精一 / 有賀鐵太郎 / 学問的神学 / 19世紀プロテスタント神学 |
研究実績の概要 |
平成28年度はシュライアマハーの『キリスト教信仰』Der christliche Glaube nach den Grundsaetzen der evangelischen Kirche im Zusammenhange dargestellt. Zweite Auflage (1830/31)の読解・翻訳にひたすら努め、これまでに第一巻の第一部(§§1~61、pp. 1-387)の読解・翻訳を終了した。 トレルチに関しては、小柳敦史『トレルチにおける歴史と共同体』(知泉書館、2015)の書評を日本宗教学会より求められたのを機会に、過去に行った研究をもう一度点検し直し、若手研究者による最新のトレルチ研究書との批判的対峙を試みた。書評そのものは『宗教研究』第90巻第3輯(387号)141-147頁に掲載された。 京都大学文学部哲学科内部での基督教学講座の成立に関して、初代の波多野精一と第二代の有賀鐵太郎の伝記的側面に着目して、それぞれの生い立ちと留学時代の勉学の実態について調べ、その研究成果を『欧米留学の原風景―福沢諭吉から鶴見俊輔へ』(知泉書館、2016年)のなかに収録した(波多野に関しては、261-288頁参照、有賀に関しては、349-375頁参照のこと)。本年度の研究によって明らかになった特筆事項は、波多野精一のハイデルベルク大学留学に関して従来知られていなかった事柄、及び間違って言い伝えられていた事柄が明るみにもたらされたことである(詳細は上記の箇所を参照されたい)。 それとは別に、京都大学基督教学講座の歴代の講座担当者の講義題目と演習内容(初代の波多野精一に関しては正確な資料が遺されていないため、第二代の有賀鐵太郎、第三代の武藤一雄、第四代の水垣渉に限定して調査した)を調べるため京都大学文学部事務室に出向き、貴重な内部資料を閲覧させてもらって、その概要を把握した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、シュライアマハーのDer christliche Glaubeの読解・翻訳に関しては、第一巻の第一部と第二部(§§62-85、pp. 391-529)をすべてやり終えるつもりであった。しかし2016年4月に前立腺がんに罹患していることが判明し、6月に半月間入院して全摘出手術を受け、その後も後遺症とたたかいながら通院治療に専念することが余儀なくされたため、研究に大幅な遅れを招来せざるを得なかった。 幸い手術は成功し、緩やかながら研究を再開し始めたが、その矢先の2017年2月初旬の学内選挙にて、次期学長に選出されたため、またしても研究の遅延を余儀なくされる事態となった。 以上のような次第で、当初考えていたような速度では研究は進捗できなくなったが、それでも全体の約三分の一の読解・翻訳の作業は成し遂げたので、最低限の基礎作業はできたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
学長に就任したために、大きく二つの点で当初の計画の見直しを余儀なくされている。 一つは研究に割く時間が圧倒的に少なくなったことである。全体で5学部を擁し、学生総数約8300名の大学の管理運営の仕事は片手間にできるものではなく、週の大半の時間は会議・面談・決裁業務などで忙殺されてしまい、自分の研究のための時間は大幅に減少してしまった。 もう一つは夏休みなどを利用した海外渡航が現状では不可能となったことである。本研究の遂行のためには、波多野精一のドイツ留学と有賀鐵太郎のアメリカ留学の実態を調査するために、ドイツ(ハイデルベルクとベルリン)とアメリカ合衆国(ニューヨーク)を訪れて現地調査をすることが不可欠であったが、少なくとも29年度は渡航することが無理な見通しとなった。30年度ないし31年度に少しでも時間を見つけて渡航し、現地での調査ができればと考えているが、いずれにしても当初の計画を大幅に修正して、今の立場で出来るような研究にスケールダウンしたいと考えている。 しかしいかなる困難があろうとも、シュライアマハーのDer christliche Glaubeの本邦初の完訳作業だけは成し遂げたいと決意している。
|