研究課題/領域番号 |
16K02212
|
研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
安酸 敏眞 北海学園大学, 学長 (40183115)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ドイツ学問的神学 / キリスト教学 / シュライアマハー / トレルチ / 波多野精一 / 有賀鐵太郎 / 19世紀プロテスタント神学 |
研究実績の概要 |
今年度はひたすらシュライアマハーのDer christliche Glaubeの翻訳に力を注ぎ、現時点で§140(第2巻387頁)まで進捗している。これで全体の約86%を終え、残り150頁弱となった。しかしきわめて難解な書物なので予断は許されない。 加納和寛『アドルフ・フォン・ハルナックにおける「信条」と「教義」―近代ドイツ・プロテスタンティズムの一断面』(教文館、2019年)の書評を依頼された関係で、トレルチと並ぶドイツ学問的神学の双璧たるハルナックについても学び直す機会をもった。 トレルチについては、『ドイツ哲学・思想事典』(ミネルヴァ書房、2020年6月刊行予定)に、「トレルチ」の項目を執筆した。日本基督教学会編『新版キリスト教大事典』(教文館、刊行年未定)にも、「近代プロテスタント神学史」「シュライアマハー」「解釈学」「キリスト教の絶対性」「トレルチ」などの項目の執筆依頼をされており、その下準備のために各種の作業も行った。 有賀鐵太郎に関しては、平成31年1月8日~10日に京都大学文書館に赴いて、当館所蔵の故有賀鐵太郎の遺品資料の調査を行った。この資料は遺族によって寄贈されたもので、有賀の同志社大学学生時代、米国留学時代、同志社大学教員時代、京都大学教授時代、退職後のものまで、段ボール箱二十数個に及ぶ。資料自体は未整理であり、また1世紀近く昔のものもあり、とりわけ日記や手帳、また講義ノートなどは多くが英語で書かれており、判読整理には膨大な時間がかかりそうである。 諸般の事情から前年度見送ったドイツでの実地調査を、平成30年8月19日~25日に実行した。ベルリン、ハイデルベルク、ミュンヘンなどで調査を行い、複数のドイツの学者とも意見交換する機会を持てた。なお、研究成果の一端を日本宗教学会で発表する予定だったが、地震の影響で当日キャンセルせざるをえなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 一番の理由は、学長になったために自分の研究に十分な時間が割けないことである。それに加えて、過去4年間に2度の大病を患い、未だその後遺症に悩んでいるため、あまり無理ができないことも挙げられる。それにつけ加えて、シュライアマハーの思考と文章は最大級の難解さを誇り、当初の計画そのものにかなりの無理があったことも、具体的に研究するなかで判明してきた。 しかしそうした限られた時間と環境のなかでも、なんとか研究を続けているので、最低限でもシュライアマハーの記念碑的大著 Der christliche Glaube nach den Grundsaetzen der evangelischen Kirche im Zusammenhange dargestellt の完訳の目途は立っている。
|
今後の研究の推進方策 |
そもそもの研究計画に無理があることが判明しているので、まずシュライアマハーの上記の書物を完璧な仕方で訳出することに焦点を絞り、余力があれば他の人物についても可能な範囲で作業を行う。当然のことながら、翻訳書の刊行にあたっては、巻末に解説・解題を付す必要があるので、それに下準備も同時並行的に行いたい。 有賀鐵太郎の未整理の書類の分類整理のために、1、2回は京都大学文書館に赴いて、同僚の小柳敦史氏とともに調査研究を行うつもりである。しかしこの作業はとてもこの一年で終わるものではなく、今後新たなメンバーを加えた研究チームを編成して、次々年度以降、新規事業として申請する予定である。 なお、10月初旬にトレルチ研究の世界的権威のFriedrich Wilhelm Graf氏(ミュンヘン大学名誉教授)を招聘する計画を立てており、それとの関連で自身のトレルチ研究も進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の一端を、9月7日~9日に大谷大学で開催された日本宗教学会第77回学術大会で発表する予定だったが、前日に北海道胆振東部地震が発生し、学会出張そのものを取りやめにせざるをえなくなり、その出張費用が丸々未消化のまま残ったこと。加えて、当初購入を予定していた大型の図書が未刊行だったので、その分の図書費を消化せずに終わったため。
|