研究課題/領域番号 |
16K02223
|
研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
武田 裕紀 追手門学院大学, 基盤教育機構, 教授 (50351721)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 二項数の立方根 / デカルト |
研究実績の概要 |
デカルトの残した4つの断片的テキスト「キルヒャーの磁石論からの抜粋」「屈折について」「二項数の立方根の考案」「カルテシウス」の翻訳・注解を行った。これらの成果は、2018年2月に法政大学出版会から刊行されることが決まっているが、それに先立って、「二項数の立方根の考案」について新しい事実が発見されたので、この成果をさまざまな媒体で公表した。 この研究では、デカルトのみならず、スタンピウンというオランダの数学者とワーセナールという測量士(アマチュアの数学者)について調査し、その結果、「二項数の立方根の考案」というタイトルのついたデカルトに由来すると考えられていたテキスト(1969年ごろに発見された)の一部が、もともとはワーセナールによってオランダ語で書かれたもの(デンマーク人のメイボムによって残された写本中に現存)のフランス語訳である可能性が高いことをつきとめた。また、ワーセナールによってオランダ語のテキストは、デカルトが1640年2月1日にワーセナールに対して書簡で提示した解法の、不十分な要約であることも明らかにした。 また上記の「キルヒャーの磁石論からの抜粋」「屈折について」は、デカルトの研究ノートであり、前者についてはキルヒャー、後者についてはウィテロやド・ボーヌとの関連が明らかであるので、これらの関連テキストについて調査をおこなった。 これらの4つのテキストの翻訳・注解のほかに、空間概念における次元(dimensio)概念について、中世から17世紀に至る歴史的展開と、デカルト『精神指導の規則』における理論化を検討した。この成果は、2017年9月に『理想』にて公表される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
メイボムによる写本など、研究の進展に決定的に重要な資料に偶然アクセスすることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に、次元(dimensio)の概念の歴史的展開と、デカルトにおける理論化を検討し、この研究は一応のめどが立ったため、2018年9月に公表される予定である。しかし、次元(dimensio)の問題は、非常に大きな射程を持ち、たとえば、パスカルやアルノーが歴史的に見てきわめて独特の使い方をしていることがわかってきた。こうした問題を当時の学問のありかた全般の中で吟味していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほかの研究資金によって支出したためと、出張旅費が予想ほどかさまなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初は予定していなかった資料調査などを行う。
|