研究課題/領域番号 |
16K02223
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
武田 裕紀 追手門学院大学, 基盤教育機構, 教授 (50351721)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メルセンヌ / 数学の確実性 |
研究実績の概要 |
本年度は、マラン・メルセンヌ(Marin Mersenne, 1588-1649)が1625年に出版した『懐疑主義者あるいはピュロン主義者に抗する学知の真理』を通して、数学の確実性という観点から、科学革命前夜の学問観の一端を明らかにした。第一に、数学的対象の存在論的身分について、第二に、数論の幾何学に対する優位性およびunitasの擁護を、懐疑主義と新しい数学への対応という観点から検討した。そして第三に、数学的論証の確実性について論じた。 第一の点については、メルセンヌはトマス流の質料形相論を保持しつつ、同時に範型主義を基礎に据えることで、 数学とは知性が事物から抽象することにより構成されるとする抽象主義と、数学が事物の真理に関与しうる学問であるという真理観とが、矛盾なく両立していることを示した。 第二の点については、数学的な観点からステヴィンによる数概念の拡張を受け止めること、もうひとつはピュロン主義に対する防衛として、存在論的な観点から単位の個物性ではなくその普遍性を確保するため、純粋数学の二つの分野のうち、存在のレベ ルにおいてより根源的で認識のレベルにおいてもより普遍的な数論に対して、もっとも確実な学問的知識としての地位を付与した。 第三の点については、数学は、その論証のうちに因果性を含み、それゆえたんに知性の虚構物ではなくて、事物の生成を説明する学問的知識たりうるとした。 また、以前に本研究課題として行ったスタンピウン=ワーセナール論争についての成果を、国際コロックで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度の最後の段階において、コロナによって予定していたいくつかの研究活動が妨げられたが、2月まではほぼ予定通り研究を行い、研究発表・論文を公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、本研究をさらに深化させた「17世紀におけるマテーシスの確実性・射程・有用性に関する研究」が採択されたので、この研究課題とリンクさせながら、本研究課題の遂行にあたる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより、予定していた出張などがキャンセルになったため。翌年度に、これらの研究活動を遂行する予定である。
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