研究課題/領域番号 |
16K02224
|
研究機関 | 四国大学 |
研究代表者 |
関口 寛 四国大学, 経営情報学部, 准教授 (20323909)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 部落問題 / マイノリティ / 生政治 / 人種 / グローバル・ヒストリー / 統治 |
研究実績の概要 |
今年度は、20世紀初頭の日本における社会改良政策とそれを推進した学知の相関についての史料蒐集を継続し、社会事業関連雑誌における留岡幸助、賀川豊彦、高島平三郎、富士川游らの著述を調査した。その結果、彼らの社会事業が犯罪学、精神医学、優生学など当該期に欧米から移入された応用科学の知見を柱に構想されていることを明らかにしえた。 また、これまでに蒐集した史料を解析し、その成果として論考「喜田貞吉と「反差別」の歴史学――起源論から系譜学へ――」『地方史研究』(第389号、2017年10月)と、共著である世界人研問題研究センター編『問いとしての部落問題研究――近現代日本の忌避・排除・包摂――』(2018年)を公刊した。これらをつうじて、部落史研究の先駆者と位置づけられてきた喜田貞吉の歴史学の特徴を、当該期の統治の科学やテクノロジーとの相関のもとに捉えなおすことができた。 加えて、現在解析を進めている内容の中間報告として、「社会運動における生政治・言説実践・アイデンティティ――水平運動の事例研究から――」、「日本近代の民衆統治と科学的人種主義」、「国境を越えた被差別部落民の移動と「人種化」の連鎖」、「統治テクノロジーのグローバルな展開と人種化の連鎖」の4本の口頭発表を行った。これらをつうじて、20世紀初頭の国家と民衆の関係を、生政治と民衆統治の観点から捉えなおす作業を押し進めることが出来た。 なお、論考および口頭発表に対しては有益な意見や批判が寄せられた。これらを翌年度以後の成果のとりまとめに活かしたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前年度の史料蒐集を継続しつつ、現時点での成果のとりまとめを行った。 前者については当初、社会事業家の言説にとどまらず、都市部で展開された社会事業関連の調査資料にまで手を広げる予定であった。時間的制約からこれについては十分展開することが出来なかったものの、翌年度中に挽回可能である。 一方で、成果のとりまとめについては予定通りに実施できた。研究計画全体としてみるならば順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、20世紀初頭に内務官僚や社会事業家たちが欧米から移入した犯罪学、精神医学、優生学などの応用科学的な知見が、都市社会事業にどのように引き継がれ、各地における社会改良政策の展開にいかなる影響を及ぼしたか、を裏付ける史料調査を実施する予定である。 また、今年度中に実施した口頭発表の内容を活字化し、公刊する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
史料蒐集が予定通りに進捗しなかったことにより、予算の一部が未執行となった。これらの作業については、次年度中に実施する予定である。
|