今年度は、研究成果を発信するべく、原稿の執筆および口頭発表に取り組んだ。 まず国際電子ジャーナルPolitika誌に論文「Racialisation et biopouvoir dans le Japon moderne. Les burakumin : construction d’une discrimination」を発表し、20世紀初頭に日本で開始された社会事業をM・フーコーの生-権力の枠組みを参照しながら位置づけ、同時にそのもとで「異常」な本性をもつ集団として様々なマイノリティグループに対するイメージが形成されたことを、被差別部落民を例に論じた。 また日本移民学会主催「国際ワークショップ――移民研究の国際化に向けて」(第1回)で、「在米日本人社会と被差別部落民」と題する口頭発表を行い、20世紀初頭、日本から北米に移民した被差別部落民について、福井県の事例から出移民の経緯、移住先のカリフォルニア州に形成された姉妹コミュニティ、白人中心主義的な人種秩序のなかで在米日本人社会において展開した被差別部落民に対する認識の変遷、について論じた。 そして東京大学・東洋文化研究所主催のワークショップ「包摂と排除 東京大学の学知」において「20世紀初頭のアカデミズムと統治の眼差し――鳥居龍蔵と喜田貞吉の被差別部落民研究から――」と題し、人類学者・鳥居龍蔵、歴史学者・喜田貞吉の被差別部落の研究をとりあげ、彼らが当該期の自然人類学や考古学の知見を動員しながら当該問題について考察したことを明らかにした。 以上をつうじて、これまでの研究成果を広く国内外の研究者に向けて発信することができたことが、大きな成果であった。また海外の研究者とも情報交換することができ、今後の研究活動に役立つ知見が得られた。
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