研究課題/領域番号 |
16K02230
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
仏山 輝美 筑波大学, 芸術系, 教授 (70315274)
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研究分担者 |
北澤 茂夫 横浜美術大学, 美術学部, 教授 (10161473)
加藤 隆之 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (70572056)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 混合技法 / ミッシュテクニック / 東アジア |
研究実績の概要 |
■日本において混合技法ミッシュテクニック(Mischtecknik)が定着していった経緯を把握することを主な課題とした。我が国におけるミッシュテクニックの定着に貢献したと考えられる画家たちを中心に絵画展「UBER WIEN ウィーン幻想派に学んだ画家たち展2018」(2018年7月3日~8月11日、筑波大学アートギャラリー)を開催した。日本に継承されたミッシュテクニックとそれによる絵画作品を実見し、その表現傾向を分析するとともに、関連資料の収集、関係者間の交流による情報の収集を目的とした。 ■同展の出品者計17名を対象に、質問紙によるアンケートを実施し、ウィーン幻想派に学んだ背景やミッシュテクニックの習得に至った経緯などについて調査した。ミッシュテクニックの使用実績のある対象者には、個々の技法に関する質問についても回答いただいた。 ■また、佐藤一郎氏を招へいしたトークイベントを開催し、同技法について我が国に移入された当時の様子や今後の展望についての見解を収集した。さらに、長谷川健司氏による技法講座(講演形式)を開催し、同技法のメカニズムや意義について研修し理解を深める機会を得た。 ■研究分担者加藤隆之(福岡教育大学)は、中国・広西師範大学を中心とした中国におけるミッシュテクニックの認知状況の調査を行い、デルナーの技法書とともに同技法が中国国内の一部に紹介されていることが明らかになった。 ■研究分担者北澤茂夫(横浜美術大学)ならびに加藤は、卵テンペラと油彩の混合技法もしくは併用技法を用いた絵画作品の制作を実践し、現代における同技法の可能性について検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
■東アジアにおけるミッシュテクニックの継承の拠点と考えられる我が国において、同技法がどのような画家とその取り組みによって実践され、いかに定着していったのかを検証するべく、実作品の展示とそれらの比較・分析、さらには同技法の実践者である画家たちへの取材を行ったことによって研究の基幹をより充実させることができた。 ■研究分担者である北澤ならびに加藤による卵テンペラと油彩の混合・併用による絵画制作実践とその評価は、我が国における同技法の意義を示す取り組みとして評価できる。 ■一方、東アジア圏における国外での調査が1件のみ(中国)であり、中国に加えて韓国やベトナムの美術系大学を調査対象とした年度初めの計画を実行できなかったことが反省点である。
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今後の研究の推進方策 |
■現代の西欧で混合技法ミッシュテクニックを実践する画家を招へいし、同技法による描画工程に関するワークショップを開催する。我が国に継承された同技法との比較・分析を行い、メディウムの処方や描画作業の工程における両者の共通点や相違点を明らかにする。 ■我が国におけるミッシュテクニックの定着に貢献した「ヴィーナマールシューレ」の関係者への直接インタビューを行い、当時の様子や同技法についての見解を記録する。 ■中国美術学院や中央美術学院(中国)、および韓国における主要な美術系大学での取材を行い、絵画技法に関するカリキュラムでミッシュテクニックが扱われているか、また、同技法を用いる画家が存在するかどうかを調査する。 ■3年間で収集した関連資料の整理、海外関係者へのインタビュー記録の翻訳を進める。 ■研究期間4年間の集大成として、研究代表者および研究分担者による活動をまとめ、報告書を発行する。編集を通して次の課題を整理し本研究の展開を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国や韓国など東アジアの美術系大学におけるカリキュラム調査、ヴィーナマールシューレ関係者へのインタビューを計画していたが、訪問日程を調整できなかったためこれらを遂行できず、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、主に中国美術学院および中央美術学院での調査費、研究成果報告書の刊行費の一部に当てたいと考えている。
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