研究課題/領域番号 |
16K02232
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小田部 胤久 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80211142)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共通感覚 / 感覚の感覚 / 美的生活 / 文明化の過程 |
研究実績の概要 |
2016年度の研究は、大きく三つに分かれる。 第一に、ヘルダーの共通感覚論の再検討を行った。ヘルダーは『言語起源論』において、「人間とは考える共通感覚器官(ein denkendes sensorium commune)である」という命題を提起している。この命題はしばしば共感覚を扱うものとして解釈されているが、けっしてそれにつきるものではない。むしろ、五官が協働し合い、そのことをとおして五官が相互に陶冶するという事態こそ、ヘルダーの命題の言わんとすることである。さらに、本研究は、この命題が20世紀前半において、カッシーラーおよびメルロ=ポンティによっていかに受容されたのかを検討し、その際この(誤解を含む)受容にハンブルク大学の心理学者ヴェルナーが関与していることをも明らかにした。研究成果は研究室紀要に発表した。 第二は、カント『判断力批判』に見られる「イロクォイ人」の表象に関する研究である。食欲にとらわれるあまり純粋趣味判断を下すことができないというイロクォイ人の逸話が『判断力批判』において孤島に取り残されたロビンソン・クルーソー風人物と並んで言及されていることに留意し、この逸話が趣味判断を文明化の観点から考察するものであること、ひいてはこの観点が『判断力批判』第一部をカントの批判哲学全体と結びつける要をなしていることを示した。研究成果は、内外での学会で口頭発表するとともに、国内の学会誌に掲載した。 第三に、近代日本における「美的生活」という概念の成立に関して研究を続けた。国際会議でその内容について報告するとともに、国際誌に寄稿した(未公刊)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外を含め学会発表を5回行い、講演会に2回参加、また、論文を4篇公刊し、初年次としては順調に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、外国での招待研究発表(2度)、国内でのシンポジウムでの発表(1度)が予定されており、その発表を中心に研究をさらに進める予定である。
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