研究課題/領域番号 |
16K02232
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小田部 胤久 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80211142)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共通感覚 / 私は感じる・私は考える / 範例性 / 近代日本における古典概念の成立 |
研究実績の概要 |
2017年度の実績のほとんどは、カントの『判断力批判』をめぐる研究であり、大きく次の三つに分かれる。 第一はカントの aesthetisch という形容詞の意味の再検討に関わるものであり、5月にソウル大学人文学科美学研究室に招待された際の講演において、aesthetisch という語には三つの次元があることを明らかにした。 第二に、9月に東京大学において行われた新プラトン主義協会のシンポジウムでは、カントにおける「範例性」の概念に即して、カントの美学理論を貫く「一と多」の主題系に新たな光を投げかけた。 第三に、『純粋理性批判』の中心的概念の一つである「統覚(「私は考える」)」が『判断力批判』においてはいかなる位置を占めているのか、という新たな問いを提起し、それに対して、「私は考える」と「私は感じる」という対比が『判断力批判』の根底にあり、『判断力批判』の独自性は「私は考える」の根底にさらに「私は感じる」という次元があることを示した点にある、という解釈を提起した。その成果は3月にユトレヒトで開かれたワークショップ「1800年頃の思考と感情」において報告した。 そのほか第四に、近代日本における「古典概念」の再検討にも着手し、その成果を3月にワイマールで開かれた会議「東アジアにおける古典的なもの」において報告した。 公表された論文としては、 Contemporary Aesthetics の特集号での「近代日本における美的生活の理念」をめぐるものがとりわけ重要である。これは上の「古典概念」の再検討を行う際の基盤ともなったものであり、逆にまた、「古典概念」の検討を通してさらにその問題の重要性が明らかとなったものでもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度には Contemporary Aesthetics の特集号で招待論文が公表され、また、学会等で招待講演を4回(そのうち国際が3回)行った。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、カントの範例性(研究実績の概要の第二を参照)に関連しては、さらに初期ロマン派、シェリングにまで検討の射程を広げ、7月に開催される日本シェリング協会の大会において発表する予定である。 第二に、研究実績の概要の四番目に記した近代日本の「古典概念」に関しては、さらにその検討を続け、5月の日本シェリング学会大会、並びに8月に開かれる「世界哲学会議」北京大会のシンポジウムにおいて発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年7月にローレ・ヒューン教授を招聘し共同研究を予定しているが、その飛行機チケットを早急に予約する必要があったため。
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