研究課題/領域番号 |
16K02232
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小田部 胤久 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80211142)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 共通感覚 / 微小表象 / 民衆芸術 / 民衆詩 / 美の無関心性 / 美への関与 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究は、大きく4つにに分かれる。 まず、「共通感覚」を成り立たせる「魂」のあり方を明らかにするために、ライプニッツ哲学にまで遡り、個別感覚がなお分離されることのない「微小表象」というライプニッツ独自の考えに再度検討を加えた。その成果は、東大駒場で開催されたフンボルト・コレーク(「神経系人文学と経験美学」)の基調講演において発表した。 第2はロマン主義関係の研究であり、コペンハーゲンで開催された初期ロマン派に関する学会、ならびにミュンヘンの科学アカデミーで開かれたシェリングを中心とする芸術理論の学会において、その成果を報告した。その内実は、2018年度の第2、第3の研究実績をそれぞれ展開させたものである。 第3に、「共通感覚」を支える「民衆」概念にを当てるために、「民衆芸術」「民衆詩」といった理念の起源を探った。「民衆詩」という概念は1770年代にヘルダーが提起したものであるが、この概念がゲレスを経てシェリングにいたるまでの芸術理論に与えた影響を明らかにした。その成果は、国際シンポジウム「ファウストの文化史」において、発表した。 第4に、カントの美学の基本概念である「美の無関心性」について、再検討を行った。カントの無関心性説は、しばしば美的態度説の起源とされるが、こうした通説に対して、カントの無関心性説は美しいものへの「実践的無関心」と「美的関与」という二つの契機からなることを明らかにした。さらに、「美的無関心」と類似の概念として、デュシャンが自らのレディ・メイドを定義するために後年になって提起した「視覚的無関心」という概念に着目し、この概念が必ずしもデュシャンがレディ・メイドを創始した際のモチーフをすくい取ってはいないことを示した。その成果は、第21回国際美学会議で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度は特別研究休暇を取得していたこともあり、研究実績欄にその一部を記したが、国際会議で基調講演を1回、招待講演を4回行い、研究成果を問うことできた。 ただし、2020年2月頃から新型コロナウィルスが流行し始め、本来であれば2月末に韓国・ソウル大学から講師を招き、研究上の興隆をさらに進める予定であったが、それを断念せざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はほぼ昨年度までに成果をまとめているが、2020年2月頃から新型コロナウィルスが流行し始め、研究の総括として海外の研究者と研究上の交流を行う予定であったが、それができなかった。本年度もな新型肺炎の先行きは見通せず、すでに2020年5月トロント、6月コペンハーゲンでの研究集会は中止となるなど、成果を公表する機会を十分に持てるか否か不明な点もあるが、秋以降に集中的に成果を公表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月頃から日本においても新型肺炎が流行し、韓国・ソウル大学から講師を招いて研究上の打ち合わせを行うことができなかった。そのため、2月末になって急遽、飛行機チケットをキャンセルせざるをえなかった。 本年度も新型肺炎の先行きは見通せないが、研究上の国際交流を進めるために使用する予定である。
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