前衛音楽の特質を考えるにあたり、D.チューダーがP.ブーレーズ《第2ピアノ・ソナタ》に「非連続」の音楽的時間を見出しことはきわめて示唆に富んでいる。これを手掛かりに、本研究は1940年代から1950年代初頭のブーレーズおよびJ.ケージの音楽の組織法について考察した。二人の往復書簡やその他の言説の検討を通して、彼らの音楽思考において働くものとしてシステム性とシアター性の二つの原理を提起した。前者は彼らの音楽素材の構造化の試みを支えている。一方、アントナン・アルトーの演劇論に由来するシアター性は、ケージの偶然性の音楽の成立に重要な役割を果たしており、前衛音楽の音楽的時間の重要な特質と考えられる。
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